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日外会誌. 85(11): 1472-1478, 1984


原著

脂肪肝における定量的評価基準としてのComputed tomographyの意義に関する実験的研究

岐阜大学 医学部第2外科

国枝 篤郎 , 河田 良 , 林 幸貴 , 西脇 勤 , 国枝 克行 , 佐治 董豊 , 坂田 一記

(昭和58年10月13日受付)

I.内容要旨
Computed tomography(以下CTと略す)の発明以来,肝の占拠性病変のみならず肝のびまん性疾患をも画像として捉え得るようになった.そこで肝のびまん性疾患のうち脂肪肝(特に脂肪乳剤輸注後に発生する)における肝CT値測定の意義について,家兎32羽を用い,生化学的および病理組織学的に検討を行った.
実験家兎を脂肪乳剤2g/kg/day投与群,4g/kg/day投与群,8g/kg/day投与群と,生食投与群,無処置群の5群に分け,4週間連日投与を行った.そして投与前後の肝CT値を測定した結果,2g群,4g群では軽度のCT値低下を認め,8g群では明らかな低下を示した.一方無処置群,生食群ではCT値低下は認められなかった.
次に実験家兎における肝CT値の変化と肝CT値に影響を与えると思われる肝構成成分との相関性について検討した.その結果,肝CT値変化とtriglyceride,total cholesterol,cholesterol esterとは有意の相関を示したが,phospholipid, protein,水分とは相関性はみられなかった.従つて脂肪肝におけるCT値の低下は,肝細胞へのtriglyceride,cholesterolの蓄積によって惹起されると考えられた.
実験家兎の肝組織標本を作製し,肝CT値の低下と,H・E染色時の空胞化の程度との相関性を検討した所,有意の相関関係が認められた.そしてCT検査によつて,軽度の脂肪浸潤ないし中等度以上の脂肪変性状態が診断可能と考えられた.
これらの結果から,従来血液生化学検査では診断困難であった脂肪肝が,肝CT値の測定により非観血的に診断可能で,又脂肪乳剤長期連用例では経時的にCTを施行することにより脂肪肝の早期発見ができる可能性も示唆された.

キーワード
脂肪肝, CT値, 脂肪乳剤, 肝脂肪沈着度

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