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日外会誌. 85(11): 1418-1425, 1984


原著

二重指示薬希釈法による肺血管外水分量測定とその臨床応用

東京大学医学部附属病院 救急部

山下 雅知 , 坂本 哲也 , 佐々木 勝 , 堤 晴彦 , 有賀 徹 , 豊岡 秀訓 , 三井 香児 , 都築 正和

(昭和59年1月6日受付)

I.内容要旨
肺水腫を思わせる肺合併症,ないし,直接的肺損傷を疑われた14症例(頭部外傷8例,多発外傷1例,熱傷5例)に対して,熱と色素を用いた二重指示薬希釈法による肺血管外水分量(EVLW)測定を施行した.各回のEVLW測定値は,Swan-Ganzカテーテル法その他でえられる12のパラメーターによる循環動態図,water balance,血漿膠質浸透圧(COP),X線写真などとあわせて,以下総合的な解析を試みた.
再現性は5.04±3.64%と良好だった(測定回数180回,測定値56個).正常肺と考えられる時期のEVLWは,3.1〜 8.3ml/kgとばらつき,肺水腫と診断するための閾値は決定し難いが,肺水腫の患者で,EVLWの上昇はX線上の変化より早期に出現した.また,X線上,肺水腫と鑑別診断困難な肺疾患の診断に,EVLW測定が有用な症例があった.
EVLWと,cardiac index,シャント率,modified respiratory index,oxygenation indexとの相関は低かった.肺動脈楔入圧(PCWP)とは正の相関(r=0.50)を示した.熱傷患者の非敗血症期において,EVLWは,COP-PCWP gradientと負の相関(r=-0.75)を示した.敗血症期には,EVLWは著明に増加し,上記の相関も認められなかった.
無気肺や感染症など,肺血管床や肺内血流分布の変化した症例や,他臓器の機能不全を伴なう症例でのEVLWの評価は難しかった.
二重指示薬希釈法によるEVLW測定は,その侵襲性に問題があるものの,反復測定可能で簡単な操作で測定でき再現性も高い,よつて,EVLWの推移を追跡することは重症患者の管理に意義をもつ.いずれにしろ,肺血管外水分量を定量化しようという試みは,将来的にも必須のものであり,より簡便かつ非侵襲的で,正確な方法が確立されるべく,今後も一層の改良が期待される.

キーワード
肺血管外水分量, 二重指示薬希釈法, 肺水腫, 血漿膠質浸透圧一肺動脈楔入圧較差, 熱傷


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