[書誌情報] [全文PDF] (5599KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 85(10): 1274-1287, 1984


原著

各種迷切術後の胃壁内自律神経分布の形態学的変化と組織内ChE活性ならびに酸分泌動態の変動に関する実験的研究

順天堂大学 第1外科教室(主任:城所仂教授)

小島 一雄

(昭和58年10月7日受付)

I.内容要旨
著者は迷走神経切離術の胃壁内自律神経系におよぼす影響を検討するため,ネコを用いて壁内自律神経基本構築を交感神経系と副交感神経系とに分けて別々に検索するとともに,各種迷切術後の壁内神経系を検索し比較した.同時に組織中のCholinesterase (ChE) 活性を生化学的に測定し,迷切術前後で比較するとともに,迷走神経を電気刺激したときの胃粘膜内ChE活性を測定した.さらに迷切術の胃液分泌動態におよぼす影響を知るため,全胃瘻ネコを用いて各種迷切を施し,胃酸分泌を測定した.胃壁内交感神経系は蛍光組織化学的手法を用い,副交感神経系はChEの染色を用いて検索した.胃液分泌動態は一匹のネコに次々と迷切の範囲を拡大したときの胃酸分泌をMAOをもつて比較した.
迷走神経の分布は胃小弯側だけでなく,胃大弯側にもおよんでおり,小弯側と大弯側の壁内自律神経構築にはほとんど差はなかった.また組織内ChE活性も小弯側と大弯側で差はなかった.また副交感神経系は胃体部と幽門部で著明な差があり,胃体部ではCholinergic fiberが密で粘膜層の先端近くまで達しているが,幽門部では粗で粘膜層内での高さも低かった.この境界(中間帯)ではCholinergic fiberが著減していた.この胃体部と幽門部の差は組織内ChE活性測定により裏付けされた.迷切術により組織内ChE活性は一時増加するが(ことにTVとSV),約6カ月後には元に戻つていた.一方,迷走神経を電気刺激すると幽門部のChE活性は120分まで急増加を示すが, 180分以後は著減した.胃体部のChE活性はほとんど変動しなかつた.各種迷切のうち,肝枝,腹腔枝,幽門洞枝の切離によっても有意の減酸効果がみられたことから, これらの神経枝も胃酸分泌に関与しており,迷走神経は肝枝,腹腔枝を介して胃大弯側に分布していることが示唆された.

キーワード
迷走神経切離術, Adrenergic fiber, Cholinegric fiber, Cholinestrase, 胃酸分泌

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。