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日外会誌. 85(8): 758-762, 1984


原著

乳頭温存手術の可能性
-乳頭・乳輪部の癌進展に関する病理組織学的検討-

徳島大学 医学部第2外科学教室

森本 忠興 , 駒木 幹正 , 山本 弘幸 , 梅本 淳 , 乾 浩三 , 西本 研一 , 園尾 博司 , 原田 邦彦 , 井上 権治

(昭和58年11月8日受付)

I.内容要旨
乳頭・乳輪部への癌進展の様相を病理組織学的に検索し,乳頭温存の可能性について検討した.対象は,乳頭・乳輪部に病変のあるもの,腫瘤が乳輪部に占居するものを除いた141例である.方法は,摘出標本の多数切片標本作成の後に病理組織学的な検索により行った.乳頭・乳輪部に癌進展のみられたものは44例 (31.2%) であり,その癌進展形式はintraductal growthのもの36例 (81.8%),stroma linvasionのみのもの3例 (6.8%),両者の混在するもの5例 (11.4%) であった.その癌進展の頻度は腫瘤の大きさ,腫瘤・乳輪間距離,組織型との間に関連を認めた.
以上より,単乳切以下の縮小手術では癌遣残の危険性を免れ得ないが,乳頭温存の手術の適応をあえてあげるならば,乳頭・乳輪部に病変がなく,腫瘤径2cm以下のものでかつ腫瘤・乳輪間距離が5cm以上のものに限定し,慎重に行うべきである.

キーワード
乳癌, 乳頭・乳輪部, 癌進展, 乳頭温存


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