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日外会誌. 85(7): 729-733, 1984


原著

脾自家移植に関する実験的研究
-移植脾の大きさ,部位,残存脾との関係について-

*) 東北大学 医学部第2外科
**) コロンバス小児病院 外科

千葉 庸夫*) , E. Thomas Boles Jr.**) , Gloria Staples**)

(昭和58年9月2日受付)

I.内容要旨
摘脾後の重症感染症の予防法の1つに脾の自家移植がある.自家移植による感染の防禦力は脾の部分切除よりは劣るが,脾全摘例に比しきわめて有効である.しかし自家移植をする際に,どれだけの脾を,どのように,どこに移植するのが最良であるかは明確ではない.本研究は,これらの点を究明するための資料とすべくSprague-Dawleyラットを用いた基礎的研究である.
(1) 脾を小片に分けて移植するか,一塊として移植するかを検討するため大網に作成したポケット内に脾を移植し,6週後に剔除した.その結果,両者間に有意の差はみられなかったが,小片に分けた群に良好な再生のみられた例が多い.
(2) 移植部位による差異を検討するため脾を大網,皮下,肝臓に移植したが,大網内では皮下に比し良好な生育がみられたのに対し,肝臓では変性あるいは吸収された例がみられ生育不良であった.
(3) 移植脾の大きさによる差異をみるため,大網内に1/5,1/3,2/3,4/5,および脾全体の移植をおこない,6週後に剔除し検討した.移植脾に対する剔出時の脾の重量割合は1/5移植例が最も大きく,脾全体移植例が最小であった.
(4) 副脾や残存脾が,移植脾に及ぼす影響を調べるため1/3移植,2/3切除群と,2/3を残したまま1/3移植した群を比較検討した.この結果,残存脾のある群では移植脾の重量割合が小さく,残存脾の再生も抑制された.

キーワード
摘脾, 脾自家移植, 脾部分切除, 脾再生


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