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日外会誌. 85(7): 734-738, 1984


原著

閉塞性動脈硬化症に対するヒト𦜝帯静脈による血行再建術
-MindichおよびDardikグラフトの比較-

山口大学 第1外科

大原 正己 , 江里 健輔 , 中野 秀麿 , 野村 真一 , 野間 史仁 , 西山 利弘 , 毛利 平

(昭和58年9月26日受付)

I.内容要旨
四肢末梢動脈血行再建術の開存率は末梢動脈のRun-offの状態と用いた代用血管に大きく影響される.我々は閉塞性動脈硬化症24例,26肢に対して,グルタールアルデヒド処理ヒト𦜝帯静脈 (Dardik) と,95%エタノール,1.3%デアルデヒド処理ヒト𦜝帯静脈 (Mindich) の移植を行ない治療成績を比較検討した.
術後1カ月より22カ月の観察期間において,大腿動脈より中枢側のバイパス例では,開存率は5/9 (55%).その内訳はMindich群3/5 (60%),Dardik群2/4 (50%) であった.大腿動脈より末梢側のバイパス例では,開存率は10/17(59%).その内訳はMindich群4/8(50%), Dardik群7/9 (78%)であつた.したがつて,Mindich群の開存率は7/13 (54%),Dardik群の開存率は9/13 (69%) であった.
閉塞原因は,1) グラフト感染.4例 (Mindich群2例,Dardik群2例).2) 末梢側吻合部仮性内膜過形成.4例.すべてMindich群であった.3) 末梢側動脈硬化性病変の進行.1例 (Dardik群).4) グラフト不良.1例 (Dardik群).したがつて,ヒト𦜝帯静脈は感染しやすく,その使用には感染予防を充分注意しなければならない.また,適当な自家大伏在静脈が得られない症例に対して,ヒト𦜝帯静脈を使用する場合,Dardikグラフトの使用を推せんする.

キーワード
ヒト𦜝帯静脈グラフト, Mindichグラフト, Dardikグラフト, 血行再建術, 開存率


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