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日外会誌. 85(6): 580-591, 1984


原著

E-PTFE graftの内膜治癒におけるPorosityの影響に関する実験的研究

九州大学 医学部第2外科学教室(指導:井口潔教授)

渡辺 俊治

(昭和58年8月29日受付)

I.内容要旨
E-PTFE graftの内膜治癒過程におけるPorosityの影響を実験的に検討した.
実験は,口径8mm,長さ7cmの市販のEPTFE graftを用いて,Porosityを増すため注射針で多数の小孔をあけて処理し,雑種成犬の腹部大動脈に置換移植した.小孔の大きさ,間隔より次の4群に分けて比較検討した. A群(21G注射針を用いて,2mm間隔で小孔をあけたもの),B群(25G針,間隔2mm),C群(25G針,間隔4mm),D群(27G針,間隔4mm).なお未処理のE-PTFE graftをE群(Control) とした.
A,B群では,移植後14日で小孔を介して外膜側から線維芽細胞,毛細血管の良好な侵入が認められ,移植後180日で移植片は全長にわたつて厚さ30~120μ の仮性内膜で覆われた.しかし,C,D群では,移植後180日においても仮性内膜の形成は不完全で,移植片中央部には壁在性血栓の残存を認めた.一方,未処理のE-PTFE graftでは,壁在性血栓の器質化は極めて悪く,移植後180日においても移植片は全長にわたつて厚さ80~160μ の壁在性血栓で覆われていた.また,E-PTFE graft壁への細胞侵入は,壁の内層および外層に限られ,壁中層は酸好性硝子様物質で充たされていた.
すなわち,市販のE-PTFE graftのPorosityは,その内膜治癒の面からみると不充分であり,何らかの方法でPorosityを増加させる必要があると考えられた.また,Porosityを増加させる方法として針を用いて多数の小孔をあけた場合,21G針,2mm間隔および25G針,2mm問隔で小孔をあけたもので良好な内膜治癒が得られた.しかし,21G針を用いた場合は針孔からの漏血が多く,25G針,2mm間隔による処理が最も妥当であると考えられた.

キーワード
E-PTFE graft, Neointimazation, Porosity


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