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日外会誌. 85(6): 563-572, 1984


原著

T細胞増殖因子を用いたヒト自己癌に対する細胞傷害性リンパ球の誘導・増殖に関する実験的研究

慶応義塾大学 医学部外科学教室(指導:阿部令彦教授)

吉住 豊

(昭和58年8月23日受付)

I.内容要旨
ヒト固型腫瘍に対する自己リンパ球を用いたautologous adoptive immunotherapyを行うことを目的として基礎的研究を行った. BALB/cヌードマウス可移植性ヒト胆管癌株Ch-1を標的細胞とし,当該腫瘍提供患者の末梢血リンパ球 (peripheral blood lymphocyte ; PBL) をin vitroでT細胞増殖因子 (T cell growth factor; TCGF) を添加して培養・増殖させ,自己腫瘍細胞Ch-1に対する細胞傷害活性をin vitro,in vivoで検討した.
PBLをTCGF存在下で培養すると,芽球化リンパ球が増殖し,細胞数は2週間で100倍,3週間で1,000倍以上に増加した. PBLをTCGF存在下で2週間培養したリンパ系細胞 (cultured lymphoid cell2w ; CLC2w) はヒツジ赤血球とロゼットを形成し,表面免疫グロブリン陰性,ペルオキシダーゼ染色陰性,IgGFcリセプター陰性,C3リセプター陰性でありT細胞系のリンパ球であつた.ヒトリンパ球に対するモノクローナル抗体を用いた間接蛍光抗体法では,CLC2wは95%以上OKT3陽性細胞であり,PBLに比しOKT8陽性細胞の比率が増加していた.
In vitroの51Cr release assayでCh-1提供患者のfresh PBLは自己腫瘍細胞Ch-1に対して細胞傷害活性を示さなかったが,同患者のCLC2wは自己腫瘍細胞Ch-1に対して明らかな細胞傷害活性を示した.さらにCLC2wはfresh PBLにくらべ,同種異型細胞株K-562およびLic-1に対しても程度は弱いが細胞傷害活性の増強を示した.しかし,CLC2wはphytohemagglutinin(PHA)刺激自己リンパ芽球をまつたく破壊しなかつた.
In vivo腫瘍中和試験 (Winn assay) でCLC2wは自己腫瘍細胞Ch-1のBALB/cヌードマウスヘの生着を阻害し,CLC2wは自己腫瘍細胞に対してin vivoにおいても抗腫瘍効果を示した.

キーワード
T細胞増殖因子, autologous adoptive immunotherapy, cytotoxic lymphocyte, cultured, lymphoid cell, ヒト胆管癌


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