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日外会誌. 85(6): 555-562, 1984


原著

ラット膵癌の発癌過程における免疫抑制酸性蛋白の影響

東北大学 第1外科(主任:佐藤寿雄教授)

江尻 友三 , 松野 正紀 , 小針 雅男 , 山内 英生

(昭和58年8月2日受付)

I.内容要旨
膵癌の発生に及ぼすimmunosuppressive acidic protein(IAP)の影響を検討する目的で,7,12-dimethyl-benzanthracene (DMBA)をSpraque-Dawley系ラット(SDラット)の膵に包埋し,さらに胆癌患者の腹水より精製されたヒトIAPを投与して実験膵癌を作成し,膵癌の発生および発育について免疫学的,組織学的検討を行った.
DMBA1mgのラット膵内包埋のみにて,60匹中51匹(85%)に腫瘤の形成をみた. また包埋後16週目より,発癌がみられ,tubular adenocarcinoma,pleomorphic carcinomaが55%を占めた.
ヒトIAPの併用により発癌時期の短縮化が認められ,ヒトIAPの投与量,投与回数の増加にしたがつて短縮した. ヒトIAP平均75mg/kgの投与を行った群では包埋後8週目にすでに癌化部の出現がみられた.
ヒトIAP投与群では非投与群に比較し腫瘤の体積は有意に増大した.ヒトIAPの投与量,投与回数の多い群では腫瘤の増大とともに腫瘤内癌化部の体積の増加が促進された.
投与したヒトIAPは72時間以内にラット血清より消失し,腫瘤の増大によりラット血清中に酸性蛋白が明瞭に検出された.
DMBA誘発膵癌の発癌促進は投与ヒトIAPの免疫抑制効果によるものと推定され,誘発初期の投与量,投与回数に依存する傾向が認められた.

キーワード
実験膵癌, 7.12-dimethyl-benzanthracene (DMBA), immunosuppressive acidic protein (IAP)


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