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日外会誌. 85(4): 324-337, 1984


原著

直接胆道造影からみた肝外胆管の長さの術前,術後の検討

順天堂大学 第1外科

扇谷 一郎

(昭和58年3月24日)

I.内容要旨
PTCなどの直接胆道造影を行っているうち,肝外胆管が非常に長い症例や,また非常に短い症例をみることが多くなった.そこで肝外胆管(左右肝管合流部から十二指腸乳頭開口部位まで)がはつきり造影されている胆のう内結石症110例と総胆管結石症108例,および対照正常群17例の長さについて比較検討した.
胆のう内結石症の肝外胆管の長さは11.0±1.45cm,総胆管結石症では12.5±1.50cm,正常群では10.7±1.57cmとなり,3群を比較すると,胆のう内結石症と総胆管結石症の肝外胆管の長さには有意差がみられたが,胆のう内結石症と正常群とは有意差はみられなかつた.
年齢,性,身長と肝外胆管の長さとは相関を示さなかつたが,総胆管結石症において肝機能が高いと胆管も長い傾向を示した.
総胆管結石症の術前と術後の肝外胆管の長さを75例で比較すると,術前12.5±1.56cmであったものが,術後10.4±1.06cmと有意に短縮していることがわかった.また術後の肝外胆管の長さと前述の胆のう内結石症の長さとは有意差がなかった.
胆管の十二指腸乳頭開口部位別頻度をみると,胆のう内結石症と総胆管結石症はほぼ同じ頻度を示し,開口部位別にその長さを比較すると,胆のう内結石症も総胆管結石症も下方に開口するからといつて有意に長いとはいえないが,両者を比較すると総胆管結石症の方がどの開口部位でも長かった.しかし術後の総胆管結石症と,胆のう内結石症とは開口部位別にみても長さに有意差がなかつた.
以上のことより,十二指腸乳頭開口部位が下方に位置し胆管が長いから胆管に結石ができるのではなく,結石ができることにより胆管が長くなり,結石をとり除けば短縮して胆のう内結石症の長さと有意差がなくなることがわかった.

キーワード
直接胆道造影, 胆管短縮率, 十二指腸乳頭開口部位, 胆管結紮


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