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日外会誌. 85(4): 283-299, 1984


原著

がん患者血清中の免疫抑制酸性蛋白(IAP)に関する臨床的研究

国立仙台病院 外科(指導:国立仙台病院長菊地金男・東北大学医学部教授石田名香雄)

菊地 秀

(昭和58年6月14日受付)

I.内容要旨
各種疾患におけるヒト血清中の免疫抑制酸性蛋白(Immunosuppressive acidic protein, IAP)をSRID法にて定量し,その臨床的意義について検討するとともに,IAPとacute phase proteinであるα1-acidglycoprotein,非特異的免疫反応であるPPD皮内反応,および末梢リンパ球のPHA反応との関連性についても検討した.
1. 正常対照群(152例)の血清中IAP値の平均値は375.3±100.1μg/mlであった.
2. 良性疾患患者(86例)の血清中IAP値は,炎症患者で高く,消化器急性炎症で平均値947.3±452.9μg/ml,慢性関節リウマチで1,191.7±253.0μg/mlであった.胃潰瘍や急性炎症患者のIAP値は,手術侵襲により一過性に上昇するが,症状の改善に伴い約4週間で正常値に復した.
3. 各種癌患者(277例)の術前IAPの平均値は642.9±311.0μg/mlであり,特に肺癌,胆道癌,食道癌で高かつた.癌患者の術後経過良好例では,IAP値は低下するが,再発により再び上昇した.
4. IAP値とα1-acidglycoproteinとは一般に正の相関を示すがα1-acidglycoproteinに比し,IAPの方がより高い増加率を示した.
5. 胃癌患者のIAP値は,PPD皮内反応や末梢リンパ球のPHA反応との間に軽度の逆相関が認められた.
以上の結果よりIAPは臓器特異性はないが,進行癌,急性炎症で増量し,臨床経過とよく一致することから,経時的なIAPの測定は,術後の経過の良否,治療効果の有無,さらに癌では再発の予知や,予後の判定に有用であり,免疫学的パラメーターのひとつとなり得ると考えられた.

キーワード
癌患者の血清糖蛋白, 癌患者の免疫抑制酸性蛋白(IAP), 免疫学的パラメーター


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