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日外会誌. 85(2): 110-118, 1984


原著

食道がんに対する温熱・エタノール・化学療法に関する実験的研究第2編in vivoにおける検討

広島大学原爆放射能医学研究所 臨床第2(外科)研究部門(指導:服部孝雄教授)

多幾山 渉

(昭和58年4月2日受付)

I.内容要旨
進行期食道がん患者に対する低侵襲かつ有効な治療法の研究の一環として,局所温熱,エタノールおよびbleomycinの3者併用による抗腫瘍効果について,C57BL/6マウスと3LLおよびC3H/HeマウスとFM3A腫瘍の2実験系を用いたin vivoの実験モデルを作製して,腫瘍体積の推移および生存日数を指標に検討した.腫瘍組織は正常組織より容易に加温された.C57BL/6マウスと3LLの場合,43℃単独処置に抗腫瘍効果が認められ,bleomycin単独処置にも同程度の効果が認められた.43℃とbleomycin併用により,抗腫瘍効果は著しく増強された.41℃単独では抗腫瘍効果は認められなかつたが,bleomycinを併用すると,比較的大きな抗腫瘍効果が認められた.この上さらにエタノールを併用すると,抗腫癒効果は増強され,43℃とbleomycinの2者併用に勝るとも劣らない強力な抗腫瘍効果が得られた. C3H/HeマウスとFM3A腫瘍の場合,43℃およびbleomycin併用により強い抗腫瘍効果が得られ,さらにエタノールを併用すると効果は増強された.しかし,41℃とbleomycinの2者またはエタノールを加えた3者併用による抗腫瘍効果は著明では無く, C57BL/6マウスと3LLの場合とは多少異なる結果が得られた.以上の実験結果より,エタノールを温熱およびbleomycinと併用することは,がんの治療に有用と思われた.

キーワード
食道がん, Lewis lung carcinoma, FM3A腫瘍, 温熱化学療法, エタノール併用療法


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