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日外会誌. 85(1): 29-37, 1984


原著

イヌ実験胃癌による微小癌の研究

鹿児島大学 第1外科

野村 秀洋 , 西 満正 , 川路 高衛 , 高尾 尊身 , 金子 洋一 , 山本 四郎 , 面高 俊一郎 , 大久保 智佐嘉 , 莫根 隆一

(昭和58年4月9日受付)

I.内容要旨
生後4カ月の雑犬4頭と生後6カ月のビーグル犬4頭の計8頭に150μg/mlのN-ethyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine (ENNG) を栗原法にて1日1回8カ月間連続投与した.その結果,次の如き微小癌の発生を認めた.
1. ENNG投与後575日目(雄ビーグル犬),1,105日目(雄雑犬),1,245日目(雄雑犬)に屠殺した3頭に胃癌22病巣(早期癌20個,進行癌2個)の発生をみ,内0.5cm以下の微小癌は13個であった.m癌11個,sm癌2個であった.
2. 微小癌13個の発生部位は,下部(8個),中部(4個),上部(1個)の順であった.腺領域別には,幽門腺領域11個,胃底腺領域に2個と圧倒的に幽門腺領域に多発していた.
3. 肉眼病型分類は,隆起型(I, Ila型) はなく,平担型(Ilb型)5個,陥凹型(Ilc型) 8個で,sm癌2個はIlc型であった.
4. 組織型は,乳頭状腺癌2回,高分化型管状腺癌2個,中分化型管状腺癌1個,低分化型腺癌5個,印環細胞癌3個である.
5. 微小癌の近傍粘膜の性状は,分化型腺癌では,過去に高度のビランが存在したことを示唆する萎縮性変化の強い粘膜がみられ,低分化型腺癌では,萎縮性変化は軽度であった.

キーワード
実験胃癌, 微小癌, N-ethyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine (ENNG)

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