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日外会誌. 84(12): 1259-1268, 1983


原著

胃癌,大腸癌患者血清中のリンパ球Fc receptorへの感作赤血球(EA)付着阻止囚子(EA rosette形成阻止因子)

横浜市立大学 第2外科

金子 等

(昭和58年2月10日受付)

I.内容要旨
感作赤血球(EA)がリンパ球のFc receptorに付着するのを阻害する物質が消化器癌患者血清中に存在するのを見出し, EA rosette形成阻止因子と名付け,その免疫学的および臨床的意義について検討した.EA rosete形成阻止因子はRaji細胞法によるimmune complex測定値や血清CH50値との相関性からみて血清中のimmune complexが主体をなすと思われる.また,その増減は非特異的細胞性免疫能とは相関を認めなかつた. しかし,血清中にEA rosette形成阻止因子が極めて多い患者では,これがIgG• FcR+ T cellと結合しているためダブルロゼット法で測定したIgG• FcR+ T cell%は少なく算定される可能性を認めた. また, このような患者ではPHA芽球化率が低く,ConA芽球化率が高い傾向を認め,immune complexの結合によりSuppressor T cellが活性化していることが示唆された.
また,胃癌,大腸癌133例について検討したところ,治療前症例において高率にEA rosette形成阻止因子の存在を認め,腫瘍の切除,免疫化学療法などにより, EA rosette形成阻止因子は減少または消失することを認めた.さらに,手術後もEA rosette形成阻止因子が検出される症例は早期に再発する傾向にあることが示唆され,EA rosette形成阻止因子は臨床的にも癌の動態の特異的parameterになり得るものと考えられた.

キーワード
胃癌, 大腸癌, EA rosette形成阻止試験, immune complex, lgG・FcR+T cell


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