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日外会誌. 84(12): 1220-1228, 1983


原著

癌に対する体外循環を利用した全身温熱療法における細胞性免疫能の推移

*) 三重大学 胸部外科
**) 新生会第一病院 外科

木村 誠*) , 大井 勉*) , 森本 保*) , 山崎 順彦*) , 矢田 公*) , 並河 尚二*) , 千種 弘章*) , 湯浅 浩*) , 草川 實*) , 細井 正晴**) , 加藤 信夫**)

(昭和58年2月17日受付)

I.内容要旨
進行癌治療の1つとして体外循環を利用した全身温熱療法が既に一部の施設で行なわれ良好な成績をあげつつあるが,細胞性免疫能への影響は未だよく解明されていない.そこで,ADCC活性,NK活性を中心に加温による細胞性免疫能への影響,及びその対策について検討を加えた.
体外循環を利用した全身温熱療法を施行した12例のべ30回の進行癌治療例につき,加温前,直腸温が41.6℃に達した治療開始時点及び4時間加温後に分け細胞性免疫能の変動をみた.リンパ球,T-cell,lgG-FcReceptor (+) cell数は加温開始と共に若干低下する傾向がみられた. ADCC活性,NK活性は加温開始時に一時的に上昇する症例もあるが,加温治療終了時には強く抑制された. しかし, 2週間後には前回治療前近く,或いはそれ以上にまで回復した. リンパ球幼若化能も加温治療終了時には強く抑制された.
次に,実験的研究として,正常人リンパ球浮遊培養液を加温することによりADCC活性, NK活性の各加温温度による変化及び, 42℃加温による経時的変化を検討し, さらに, MMC,5-FU,ADMを各々, リンパ球浮遊液に添加後1時間加温しNK活性への影響をみた.その結果, ADCC活性, NK活性共,加温温度が40℃を超えると強く抑制された.42℃加温では, NK活性のみ10分後一時的に活性化されたが,その後,両活性共,直線的に低下した.抗癌剤添加によるNK活性への影響は42℃加温においても認めなかった.
以上より, 体外循環を利用した全身温熱療法において細胞性免疫能は強く抑制されImmunopotentiator併用の必要性が示唆されたが一過性であり2週後には回復がみられた.また, in vitroの実験から抗癌剤は加温時においてもNK活性を抑制しないことから全身温熱療法時の併用は妥当であると思われた.

キーワード
進行癌, 全身温熱療法, 体外循環, ADCC活性, NK活性


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