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日外会誌. 84(6): 508-517, 1983
原著
食道胃静脈瘤の外科治療
-118例の経験-
I.内容要旨1968年6月から1982年5月までに入院した118例の食道胃静脈瘤の患者のうち113例に外科治療を行つた.これらについてその基礎疾患,術前の肝機能検査成績および選択した手術々式などが治療成績に及ぼす影響について検討を加え,若干の考察を試みた.疾患別分類では肝硬変が圧倒的に多く全体の86%を占める.硬変症例と非硬変症例について術前の肝機能検査成績を比較すると,多項目にわたつて前者の機能障害程度が強いことが証明された.施行した手術々式では,経胸的食道離断術と脾摘除を併せ行つた症例が多く(83%),そのうち両者を一期的に行う標準手術が最も多く選ばれた.経胸的食道離断術だけにとどまつたものがこれに次ぎ,脾摘除術,噴門側胃切除術などが残りの少数例に施行された.手術死亡例は14例で,全手術例の12.4%に相当する.死亡例は肝硬変に対して行つた食道離断術に限られており,他疾患,他術式の症例にはみられない. とくに緊急食道離断術施行例では12例中4例と最も悪い死亡率を示した.直接死因としては縫合不全に肝不全が重なつたと思われる敗血症が多い.遠隔死亡では肝不全と肝癌死亡が大半を占めるがこれを含めた累積生存率曲線を示した.
東大第2外科法に沿つた筆者らの標準術式と術中術後管理のあらましについても言及し,出血患者を収容した場合のルーチン化した手順を述べたが,原則として待期手術にもつてゆく方針をとつている.
手術禁忌項目(腹水,黄疸,脳症など)を有する患者に対しては,手術以外の方途を講じるべきであり,このような,症例の選択と,そのタイミングを誤らなければ手術そのものの治療成績はさらに向上するものと考える.
キーワード
食道胃静脈瘤, 経胸的食道離断術, 経横隔膜的脾摘除術, 予防待期手術, 累積生存率曲線
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