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日外会誌. 84(4): 355-368, 1983


原著

食道平滑筋腫と平滑筋肉腫
-自験9例の報告と本邦文献上報告例の分析-

東京大学 第1外科

島津 久明 , 小堀 鷗一郎 , 団野 誠 , 横畠 徳行 , 斉藤 英昭 , 森岡 恭彦

(昭和57年8月13日受付)

I.内容要旨
食道平滑筋腫7例と平滑筋肉腫2例の自験例について報告するとともに,これらを含む平滑筋腫260例と平滑筋肉腫35例の本邦文献上報告例について分析した成績を述べ,併せて若干の文献的考察を行つた.
平滑筋腫の自験例の内訳では,年齢37~68歳,男6例,女1例で,これらのうち2例は食道癌, 1例は胃平滑筋腫と併存していた. 4例は全く無症状であつた.発生部位では上・中部食道各2例,下部食道3例で,食道癌併存の2例を除く5例中3例に腫瘍摘出, 2例に食道亜全摘を行い,全例軽快退院した.平滑筋肉腫の2例はいずれも嗚下困難を主訴とし, 1例は上部食道に発生した43歳,女で,食道亜全摘施行後4年6カ月の現在健在であるが, 57歳,男の他の1例は腫瘍が浸潤性に急速に発育して死亡し,剖検で肺転移を伴う巨大平滑筋肉腫であることが確認された.
食道平滑筋腫の本邦集計例の内訳では,平均年齢43.4歳,男女比1.6 : 1で, 31.8%の症例に膿下困難が認められ,病悩期間も様々であつたが,20%の症例は全く無症状であつた.食道における発生部位では,上部16.5%,中部28.6%,下部54.4%で下部が過半数を占め,また多発例が6.6%の頻度に認められた.腫瘍の大きさには大きな幅がみられたが,半数近くが径5cm以上の腫瘍であつた.これらの症例のうち(他疾患併存例を除く),65.6%に腫瘍摘出, 33.9%に食道切除,0.5%に内視鏡的摘除が行われていた.一方,平滑筋肉腫の集計例の内訳では,平均年齢52.9歳,男女比1.8 : 1で, 86.2%の高頻度に嗚下困難がみられ,病悩期間も1年未満の短い症例が過半数を占めていた.腫瘍の大きさでは径5cm以上のものが80%を占め, また臨床的な形態では限局性腫瘤型20例,浸躙性増殖型9例,不詳6例であつた.治療では,全体として82.8%の症例に腫瘍の摘除が行われていたが, とくに浸濶性増殖型の転帰が不良であつた.

キーワード
食道平滑筋腫, 食道平滑筋肉腫


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