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日外会誌. 84(4): 301-309, 1983


原著

胎便NCA-2の精製と抗原構造の解析
-正常成人糞便中NFA,腫瘍組織中CEAとの異同について-

大阪大学 医学部外科学第2講座(主任: 神前五郎教授)

栗山 洋

(昭和57年9月1日受付)

I.内容要旨
Carcinoembryonic antigen(以下CEAと略す) は消化器癌の臨床上重要なマーカー蛋白であることは広く認められている. しかし松岡らによつて糞便中に発見されたCEA関連抗原すなわちNormal Fecal Antigen(以下NFAと略す)や, Burtinらによつて胎便中に発見されたNoncross reacting antigen-2(以下NCA-2と略す)とCEAとは類似性が強く, これらの区別は非常に困難である.
本研究は胎便よりCEA関連抗原(NCA-2とNCA)を精製し,その免疫化学的性状ならびに化学組成を大腸癌CEA,糞便NFAとはじめて比較検討し,その相違を明らかにしたものである.
conventionalな家兎抗CEA血清,モルモットの大腸癌CEAとのみ反応する特異抗CEA血清,特異抗NFA-2血清を用いた免疫拡散法によつて,胎便NCA-2は大腸癌CEA特異抗原決定基を欠き,大部分がNFA-2特異抗原決定基をも欠いていることが明らかにされた.また,精製NCA-2を用いて作製した抗NCA-2血清を用いて検討すると, NCA-2特異抗原決定基は胎便中に証明出来なかつた.
胎便にはNCA-2とNCAの2つのCEA関連抗原のみがみられ,糞便と異なりNFA-1,NFCAの存在は認められなかつた.NCA-2は分子量が15万~17万の糖蛋白質で,β-グロブリン領域に電気泳動され,大腸癌CEAおよび糞便NFAとアミノ酸組成,糖含量,糖組成に関して極めて類似している.

キーワード
CEA関連抗原, 胎便, NCA-2

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