[書誌情報] [全文PDF] (3346KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 84(4): 271-281, 1983


原著

小児高カロリー輸液における必須脂酸投与に関する研究
第I編 基礎的研究

千葉大学 医学部第一外科学教室

田代 亜彦 , 真島 吉也 , 奥井 勝二

(昭和57年8月17日受付)

I.内容要旨
急速な成長発育をとげる新生児・乳幼児栄養における必須脂酸投与の重要性は古くから強調されている.小児外科患者の管理上不可欠の治療手段となつた高カロリー輸液法total parenteral nutrition (TPN) における必須脂酸欠乏状態の病態,大豆油脂肪乳剤による予防・治療効果を解明し,必須脂酸投与のための脂肪乳剤必要量の決定のための基礎的資料を得るため,以下の動物実験を行なつた.
先ず,離乳したばかりのラットに6週間TPNを施行し,無脂肪TPN群でscaly skinの発現,水分代謝の失調,血清・肝の脂酸構成の変化など,経口栄養におけると同じ必須脂酸欠乏状態を見,総投与カロリーの10%を脂肪乳剤で投与することによりこれを予防出来た.また,10%脂肪TPN群では無脂肪TPN群に比べ体重増加が有意にすぐれていた.
次に,成長期にある仔犬に,8~10週間無脂肪TPNを施行したところ, 2週以内に血清脂酸構成上必須脂酸欠乏パターンを示し,組織学的検索で肝の小葉中心性脂肪浸潤を示した.
また同腹仔犬に脂肪乳剤投与量を変えたTPNを8週間施行し,血清・肝の脂酸構成の推移を観察したところ,必須脂酸投与のためには総投与カロリーの2%の脂肪乳剤投与では不充分で, 4%程度(リノール酸で2%) の投与が必要と思われた.
以上の知見は,小児TPNにおいて,必須脂酸投与のための脂肪乳剤必要量を臨床的に検討するにあたり,示唆する所大であると思われる.

キーワード
小児高カロリー輸液(TPN), 必須脂酸欠乏, 脂肪乳剤, 脂酸構成


次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。