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日外会誌. 84(2): 151-160, 1983


原著

四肢動脈慢性閉塞性疾患における手術前後の血行動態
133Xeクリアランス法による研究-

岐阜大学 第1外科(指導:稲田潔教授)

上田 耕司

(昭和57年6月21日受付)

I.内容要旨
末梢動脈閉塞性疾患における手術前後の血行動態を明らかにするため,閉塞性動脈硬化症,バージャー病,レイノー症候群その他の患者で血行再建術または交感神経切除術を施行した64例について,術前・術後に133Xeクリアランス法を行い,症状および他覚的所見と比較検討した.
患者を水平仰臥位で約15分間の安静を保たせた後, I群では患肢の足背部皮下に, II群では前胆骨筋に生理食塩水に溶解した133Xe 50~100μCiを注射し, コリメーターを皮膚面より10cmの距離に固定し,安静時運動時および2分間の駆血後の反応性充血時に133Xeクリアランスカーブを描かせ,その減衰角度より半減時間(分) を求め比較し次の結果を得た.
1)術前のクリアランスは症状とよく相関し, とくに安静時疼痛のある例では著明に低値を示した.
2)I群では術後有意にクリアランスの改善を認め,とくに交感神経切除例では血行再建例よりも著明に改善された. しかし血行再建例の多くに認められた脈拍再現や脈波の改善などの結果とは相関を認めなかつた.
3)II群では血行再建術後のクリアランスが安静時および反応性充血時で有意に改善され, 自覚症状,他覚的所見,脈波ともよく相関した. しかし運動時のクリアランスは誤差が大きく有意差がみられなかつた.
4)133Xeクリアランス法は手技が簡便で四肢血流障害患者の病態生理の究明,治療法の選択および効果の判定などに有用である.

キーワード
133Xeクリアランス法, 慢性閉塞性動脈疾患, 血行再建術, 交感神経切除術, プロスタグランディンE1


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