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日外会誌. 84(2): 113-118, 1983


原著

急性潰瘍に対する実験的研究
-閉塞性黄疸と迷切の影響を含めて-

東北大学 第一外科教室(主任:佐藤寿雄教授)

宮川 英喜 , 亀山 仁一 , 佐々木 巌 , 今村 幹雄 , 佐藤 寿雄

(昭和57年7月19日受付)

I.内容要旨
急性潰瘍の早期予測と閉塞性黄疸の急性潰瘍に及ぼす影響, さらに急性潰瘍の予防,特に迷切術の効果について胃粘膜の攻撃一防御の両因子から実験的に検討した.
体重約260grのラット170匹を対照群,黄疸群,迷切群,黄疸兼迷切群の4群にわけ, 胃内にpH電極と銀塩化銀電極を挿入した. ラットを水浸拘束し,10時間の胃内pH, 胃粘膜potential difference(以下,PD),潰瘍係数を経時的に測定し以下の成績を得た.
1)対照群では拘束後経時的に胃内pH,PDは低下し,それに伴つて潰瘍係数は増加した.
2)黄疸群では胃内pHは対照群と同様に低下したが,PDはより著明に低下し,潰瘍係数はより高値となった.
3)迷切群では胃内pHは対照群に比し高値を維持したが, PDはむしろ低値となった.潰瘍係数は対照群に比し低値となった.
4)黄疸兼迷切群では胃内pHは黄疸群よりは高値であったが,迷切群よりは低値となった.PDは黄疸群よりさらに低下し, 4群中最低となった.潰瘍係数は黄疸群より低値であったが迷切群より高値となった.
以上よりまず胃内pH,PDの同時連続記録により,急性潰瘍の発生予測や治療効果判定が可能と思われた.次に水浸拘束では胃酸分泌亢進と粘膜防御の脆弱化による攻撃一防御不均衡が生じ,潰瘍が発生するものと思われ,黄疸では防御因子がさらに低下して潰瘍の発生が助長されるものと思われた.また急性潰瘍の予防においては,黄疸の有無に依らず,迷切術はある程度有効であるが完全ではないと考えられ,他に胃粘膜防御能を保持する対策が必要と思われた.

キーワード
急性潰瘍, 胃内pH, potential difference (PD), 閉塞性黄疸, 迷切術


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