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日外会誌. 84(2): 103-112, 1983


原著

乳癌の大小胸筋保存手術による郭清可能範囲の検討

横浜市立大学 医学部第2外科(主任:土屋周二教授)

金井 忠男

(昭和57年7月19日受付)

I.内容要旨
非定型的乳房切断術のリンパ節郭清についての報告はいくつかあるが, 日本人を対象としたものは少なく, リンパ節を含む周囲脂肪組織の郭清まで言及したものはない.今回,著者は大小胸筋保存手術での完全な郭清範囲を検討し,その結果および文献的考察からこの術式の適応を検討した.
無作為に選んだ35例を対象とし,同ー症例に第1段階として大小胸筋保存手術を行い,第2段階として定型的乳房切断術を追加する方法で大小胸筋保存手術の郭清可能範囲を検討した.
大小胸筋保存術式によつて,腋窩はすべての症例で脂肪組織も含め完全に郭清されたが,その他の部位では郭清が不十分な症例があつた.大小胸筋保存手術での郭清の難易は体型によつて差があり,肥涸症例では腋窩以外の部位で郭清が不十分となるものが多かった.また鎖骨下リンパ節やHalstedリンパ節では大小胸筋保存手術中に触知したリンパ節数と摘出されたリンパ節数と一致しない例が多かった.郭清可能な範囲よりみて,術中腋窩リンパ節の迅速診断で転移がない場合や,腫瘤が2cm以下で触診上腋窩リンパ節腫脹を認めない場合が大小胸筋保存手術の適応と考えられる.

キーワード
乳癌, 外科治療, 縮小手術, 大小胸筋保存手術, リンパ節郭清


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