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日外会誌. 84(2): 95-102, 1983


原著

術後呼吸管理および肺合併症防止対策としての気管内細管の応用

徳島大学 医学部外科学第2講座(主任:井上権治教授)

浜口 伸正

(昭和57年7月6日受付)

I.内容要旨
術後呼吸管理および肺合併症防止対策として,経皮的に甲状軟骨,輪状軟骨間より気管内に細いチューブを挿入留置し, 自発呼吸下にこのチューブより直接気管内に酸素送気をする一方,喀痰吸引にも利用する方法を行い,その有効性を検討した.
臨床例において,手術侵襲,高齢,術前呼吸機能障害などの点より,いずれも術後肺合併症の心配された,胸部あるいは上腹部および食道癌手術などの20症例に本法を施行した結果,術後肺合併症は認められなかった.また通常の酸素投与(経鼻,マスク等)でPao270mmHg以上にならない症例でも,本法では80mmHg以上に保たれ,術後換気障害に対しても効果的であった.本法の換気動態への影響をみるために,急性換気不全犬(左第4~9肋骨を5cm切除,両側横隔神経切断)にて,気管内細管より空気送気時の呼吸補助効果を実験的に検討した.気管内空気送気量が増加するに従い,呼気終末圧の上昇, FRCの増加が得られ, CPAP様効果を認めた.この効果は,術後肺合併症の要因となる術後早期の経時的に進行してくる肺容量低下を防止できた.また肺胞換気量は増加し,死腔換気率は減少し,その結果, Pao2,Paco2は正常範囲に保たれ,本法のみにて十分な呼吸の維持が可能であった.
本法は,術後肺合併症が高率に予想される症例,また通常の酸素投与のみでは十分な血中酸素濃度が得られず,いずれ気管切開,人工呼吸等,何らかの呼吸補助が必要になると考えられる状態に対して効果的であり,本法を行うことにより,血液ガスの改善が得られ,また肺合併症防止対策として,簡便で,きわめて有効な方法であった.

キーワード
術後肺合併症, 気管内細管挿入, 気管内酸素送気, CPAP様効果, 気道内ガス wash out


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