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日外会誌. 84(1): 80-91, 1983


原著

超音波断層法による膵頭部領域癌診断に関する研究

久留米大学 第2外科(指導:古賀道弘教授)

矢野 真

(昭和57年3月19日受付)

I.内容要旨
開腹手術を行ない確定診断のついた膵頭部領域癌67例を対象とし,超音波断層像の検討を行ない,また切除しえた29例のうち17例については切除標本の水浸下エコーグラムを行ない,膵頭部領域癌のultrasonic tissue characterization(超音波組織特性)についても検討,次の結果を得た.
膵頭部領域癌の超音波断層像の特長としては,直接所見では, i) 腫瘤内部エコーレベルの異常,ii) 腫瘤辺縁の不整像, iii) 腫瘤内部エコーの不均一, iv) 膵の限局性腫大, v) 腫瘤後部エコーの減弱・消失の5つが重要と思われ,間接所見では, i) 総胆管拡張, ii) 胆嚢腫大, iii) 肝内胆管拡張, iv) 膵管拡張, v) 膵周辺血管の異常の5つが重要であると思われた.特に総胆管拡張は97.6%に認め,無黄疸例においても8例中7例に描出され,超音波断層法は膵顕部領域癌のスクリーニングにとつて非常に有用である.超音波所見と手術成績との関連をみると,切除例にては,非切除例に比較して,膵の限局性腫大,腫瘤内部エコーの不均一,膵管拡張,膵周辺血管の異常などの超音波所見出現率の低下を認め,特に切除例にては膵周辺血管の異常を描出した例はなかつた.超音波診断成績の検討では, 67例中37例(55.2%)が確診,疑診例も含めると43例(64.2%)が膵頭部領域癌と診断された.膵頭部領域癌の鑑別診断は,腫瘤描出率,膵管拡張,腫瘤と総胆管の位置関係に注目することによりある程度可能である.切除標本の水浸下エコーグラムにより行なった.ultrasonic tussue characterizationの検討では,腫瘤のエコーレベルは組織型,間質結合織増生,割面構造などと密接な関連を示し,特に切除標本の割面構造と最も深い関連を示した.

キーワード
膵頭部領域癌, 超音波断層法, 超音波組織特性, 水浸下エコーグラム


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