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日外会誌. 83(12): 1377-1386, 1982


原著

食道癌術前Bleomycin動注療法の病理組織学的研究
-とくに核DNA量を指標として-

鹿児島大学 第一外科学教室(主任:西 満正教授)

丸田 憲三

(昭和57年7月2日受付)

I.内容要旨
食道癌に対して術前,食道固有動脈内BLEOMYCIN(BLM)one-shot動注15mg(3例)30mg(19例)45mg(6例)総計28例,またBLM全身投与(7例)放射線治療(13例)放射線とBLM併用(4例)および非治療(14例),総計66症例(全例扁平上皮癌)について,病理組織学的に検索し,主としてBLM動注の効果を核DNA量測定および血管造影所見と対比し,以下の結論をえた.
BLM動注による主病巣の組織学的変化としては,癌胞巣浸潤先端部の壊死,癌胞巣内部の癌細胞の変性に伴う裂隙形成と線維化,炎症細胞浸潤,壊死外側の異物型巨細胞を伴う組織球の増生,壊死周囲間質の線維化が特徴的であつた.また転移リンパ節病巣も主病巣と同じ組織所見を示した.
動注による癌細胞の核DNA量の変化としては,癌胞巣浸潤先端部でのDNA量の増加(hyper-4c)DNA量の分散の増大がみられ,とくにBLMの組織効果のみられた壊死周囲でその変化が著明であつた.組織所見と核DNA量測定,および血管造影所見が互いに相関することから,組織学的所見がBLM動注による効果であることを裏付けた.また組織効果の明らかでない動注例でも細胞のDNA回転のレベルではすでに変化が起きていることが示唆された.
BLMは高分化型癌ほど強い組織効果を示す傾向があり,それは癌胞巣浸潤先端部により大きな効果をおよぼすことから,放射線との併用療法がより合理的であると考えられた.
BLM 30~45mgのone-shot動注は症例によつてはBLM 300mg全身投与以上の効果を示し,さらに遠隔リンパ節への効果も期待できる.
食道固有動脈造影で特異的な血管造影所見のない症例では,動注による一部癌胞巣の崩壊に至る明らかな組織効果は期待できない.

キーワード
BLEOMYCIN (BLM), BLM one-shot動注 (BLM single injection), 食道固有動脈造影, DNA量ヒストグラム, Relative DNA histogram


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