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日外会誌. 83(11): 1331-1343, 1982


原著

ATP-MgCl2による虚血性急性腎不全の治療

千葉大学 医学部第2外科教室(主任:佐藤 博教授)

添田 耕司

(昭和57年5月28日受付)

I.内容要旨
<目的>shock等に起因した虚血性急性腎不全に, ATP-MgCl2を投与し有効性の有無を検討し,かつその有効性の機序を解明し,またこれら実験結果にもとずき臨床応用を試みることを目的とした.
<実験方法>雑種成犬を用い90分の腎虚血を行い,血流再開後投与群にはATP-MgCl2 50 µmole/0.6ml/kgを投与し,非投与群には同量の生食を投与した.経時的に腎機能の変化を検討する一方,血流再開後90分にて腎細胞内ATP,乳酸値毛及びenergychargeをはじめ,腎組織水分及び電解質含有量を測定し,電顕にて腎微細構造,糸球体内皮細胞の厚さ及び腎間質細胞の% circularityを検討した.
<結果>ATP-MgCl2投与群では非投与群に比して,血清クレアチニン値及びexcreted fractiox off iltered sodium値が有意に回復していた.腎細胞内energy代謝の異常,腎皮質の水分及びNa含有量は,投与群で非投与群に比して有意に改善していた.糸球体内皮細胞の厚さ及び間質細胞の% circularityで示されるcell swellingは投与群で非投与群に比して有意に減少し, microcirculationの改善を示唆していた.
<結語>90分の虚血性急性腎不全犬にATP-MgCl2を投与し有意に腎機能を回復し得た.その有効性の機序は,虚血により生じた細胞内energy代謝異常を回復し,ポンプを駆動してcell swellingを改善しmicrocirculationを回復することにあると考えられる.
<臨床応用>虚血性急性腎不全 6例に ATP-MgCl2 (22.5~ 55.6mole/kg)を投与し,全例救命しえた.

キーワード
腎虚血, ATP-MgCl2, 腎細胞内ATP, 腎細胞内energy charge, cell swelling

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