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日外会誌. 83(10): 1177-1189, 1982


原著

手術侵襲後のエネルギー,蛋白代謝に関する実験的研究

新潟大学 医学部第1外科(指導:武藤輝一教授)

薛 光明

(昭和56年12月17日受付)

I.内容要旨
手術侵襲に伴いエネルギー,蛋白代謝は変動し,糖代謝異常としてのsurgical diabetesあるいは蛋白異化の亢進という変化を生じる.この手術侵襲後のエネルギー,蛋白代謝をエネルギー物質の酸化および蛋白合成の面より14C-標識化合物を用い実験的に検討し,次の結果を得た.
1.手術侵襲後に14C-ロイシンからの血清蛋白およびアルブミンヘの14Cのとりこみが増大した.侵襲後のcatabolic stateにおいても肝でのアミノ酸からの蛋白合成およびアルブミン合成は亢進していた.このアルブミン合成の亢進には膠質浸透圧維持との関連が推察された.
2.14C-グルコースからの血清蛋白およびアルブミンヘの14Cのとりこみも増大し,侵襲後の糖新生の盛んな時期においても,一方で糖からの蛋白合成の亢進が認められた.
3.手術侵襲後のアルブミン合成の亢進は術後1日目よりも4日目により著明であつた.
4.侵襲後のsurgical diabetesの時期においても14C-グルコース酸化の抑制は認められず,エネルギー源としてよく酸化されていた.
5.14C-ロイシン酸化は手術侵襲後著明に亢進を示した.
以上のことから,侵襲後の蛋白異化の亢進は糖新生の材料の供給ばかりでなく,肝での蛋白合成および末梢でのエネルギー源としてのアミノ酸の供給のためでもあると思われた.

キーワード
蛋白合成, アルブミン, 蛋白異化, surgical diabetes


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