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日外会誌. 83(8): 769-782, 1982


原著

イヌ腎移植における新免疫抑制剤Mizoribineの移植腎生着延長効果,および副作用の検討と,azathioprine,steroidとの合併投与の比較検討

北里大学 外科

横田 和彦

(昭和57年3月18日受付)

I.内容要旨
臓器移植後の抗免疫療法による合併症の頻度は高く,副作用の少ない強力な化学的免疫抑制剤の開発が望まれる.最近開発されたMizoribine(4-Carbamoyl-1-β-D-ribofuranosylimidazolium-5-orate)(MZ)の免疫抑制効果につき,ビーグル犬腎移植の生着延長効果,副作用を検討し,azathioprine(AZ)単独投与,prednisolone(PR)を加えた2剤ないしは3剤合併投与との比較検討を行い次のような結果を得た.
1).移植後生存期間について,無処置対照群と比較すると,MZ投与群は2.5mg/kg/day投与で約1.5倍,5-10mg/kg/day投与で2.5倍の生存延長が得られた.AZ投与群は,1mg/kg/day投与で約2倍,2.5mg/kg/day投与で約3倍の生存延長が得られたが,5mg/kg/day投与では副作用のため生存延長は得られなかつた.
2).MZ投与群は,MZ投与量に対応して血清クレアチニン値の上昇は抑えられ,末梢白血球数低下,肝機能異常を認めなかつた.移植腎の組織像では,5mg/kg/day以上の投与で腎の基本構造がよく温存されていたが,AZ投与群に比べ,小円形細胞浸潤が著明であつた.
3).副作用としてMZ投与群は消化器症状消化管出血がみられたが,感染症は稀であつた.AZ投与群では消化管出血,感染症の頻度が高く,AZ 2.5mg/kg/day以上の投与では末梢白血球数低下が著明であつた.また肝機能異常も一部に認められた.
4).MZはAZとほぼ同等の移植腎生着延長効果をもつともに,AZにみられる骨髄抑制,肝機能障害が少ない薬剤で,AZに代つて用いることのできる免疫抑制剤である.
5).2剤,3剤合併投与では免疫抑制効果の増強が示唆され,とくに3剤合併投与群で長期生存犬(93日,210日)が得られ,移植腎組織像の変化も少なかつた.3剤投与法の臨床応用が期待できる.

キーワード
イヌ腎移植, 化学的免疫抑制剤, Mizoribine, 免疫抑制剤の副作用, 多剤合併免疫抑制療法


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