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日外会誌. 83(8): 736-745, 1982


原著

癌に対する体外循環を用いた全身温熱療法の生体諸臓器機能におよぼす影響

鳥取大学 第1外科

前田 迪郎 , 古賀 成昌 , 清水 法男 , 尾崎 行男 , 金山 博友 , 浜副 隆一 , 泉 明夫 , 狩野 卓夫 , 山根 歳章

(昭和57年3月23日受付)

I.内容要旨
癌の再発による末期症例11例に対し,体外循環を応用した血液加温による全身温熱療法を計31回施行した.本法では,直腸温41.5-42℃という非生理的高温が長時間維持されるため,癌腫組織のみならず,正常臓器にも種々の障害が発生することが危倶される.そこで,本法が生体諸臓器機能におよぼす影響について検討を行なつたところ,以下の成績が得られた.
1)心・循環器機能への影響として,加温中には心拍数,心拍出量の著しい増加がみられたが,肺動脈圧,肺wedge圧,中心静脈圧,動脈圧には大きな影響はみられなかつた.血液ガス所見では加温中にpH,base excessの低下がみられたが,高度の代謝性アジドージスはみられなかつた.
2)末梢血液所見では,著明な血小板数減少がみられ,1例はこれによる腹腔内出血のため死亡した.
3)肝・腎機能その他の生化学検査値には大きな影響はみられなかつた.
4)リンパ球機能の低下がみられたが, reversibleな変化であつた.
5)下肢myopathyが高率に出現したが,加温中のGIK方式によるPの大量投与により,その発現はほぼ防止できた.
以上の結果より,本法は重篤な心・肺・肝・腎などの機能障害を有する症例を除けば,十分な管理により安全に施行しうると考えられた.

キーワード
再発癌, 全身温熱療法, 体外循環, 生体臓器機能

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