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日外会誌. 83(7): 677-690, 1982


原著

胆汁酸吸収および胆汁酸代謝に関する実験的研究

神戸大学 第1外科学教室(指導:斉藤洋一教授)

金村 稔

(昭和57年2月8日受付)

I.内容要旨
in vivoに於ける胆汁酸吸収を明らかにする目的で,ラットの門脈,空腸静脈,回腸静脈,および,結腸静脈血中の胆汁酸量を測定し,胆汁酸組成を分析した.また,腸各部位の胆汁酸吸収および胆汁酸代謝に対する作用を明らかにする目的で,空腸50cm,回腸20cm,および,50cm,回盲部(回腸20cmと盲腸)切除を施行し,門脈,結腸静脈,胆汁,小腸,大腸,糞中の胆汁酸量および組成の変化を検討した.その結果,以下の諸点が明らかとなつた.
1)門脈血および各腸管静脈血中の胆汁酸量は血流量に関係なく,採血時間に依存した.胆汁酸組成は採血時間に関係なく凡ね一定であつた.
2)空腸,回腸,結腸(盲腸を含む)の各静脈血中胆汁酸濃度比は,略々2:6:1であり,門脈血中の濃度は回腸静脈血中濃度にほぼ等しく,全身血中胆汁酸濃度の約20倍であつた.
3)空腸静脈,回腸静脈,門脈血中の胆汁酸組成は互いに類似していたが,結腸静脈血ではDCA,HDCA,ω-MCAなどの二次胆汁酸の割合が高かつた.
4)空腸切除は胆汁酸代謝,腸肝循環,胆汁酸組成に特に著しい影響を示さなかつたが回腸切除は胆汁酸吸収を低下させ,同時に胆汁中への胆汁酸分泌の低下,及び胆汁酸プールサイズを減少させたが,糞中胆汁酸排泄量を増加させた.胆汁酸組成ではDCAの増加が著しく,逆に,CDCA系胆汁酸が減少した.
5)回盲部切除群でも回腸切除群に類似する変化が認められたが,この群に特徴的な変化は二次胆汁酸の生成とコプロスタノールの生成が著しく低いことであつた.このことから,これらの生成は主に盲腸で行われていることが推測された.

キーワード
胆汁酸吸収, 血中胆汁酸, 腸肝循環, 腸部分切除


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