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日外会誌. 83(6): 582-592, 1982


原著

DMBAによる膵癌ラットのestrogen receptorに関する研究

大阪市立大学 第1外科

佐竹 克介 , 吉本 隆行 , 向井 龍一郎 , 梅山 馨

(昭和57年2月9日受付)

I.内容要旨
7, 12-dimethylbenz(a)anthracene(DMBA)をSprague-Dawleyラットの膵に直接接種して作成した実験膵癌について,estrogen receptorを2,4,6,7-3H-estradiol-17βを用いたdextran coated charcoal法で測定した.なお,最大結合位数3fmol/mg protein以上,解離定数(kd)10-9M以下をestrogen receptor陽性とした.
DMBA接種ラットでの膵腫瘤形成は,接種150日以後で雄40匹中32匹(80%),雌16匹中13匹(81.3%)にみられた.
発癌率は雄40匹中16匹(40.0%),雌16匹中7匹(43.8%)であつた.
Estrogen receptorは,正常膵ではすべて陰性であつた.膵腫瘤中非癌群ではatypical ductal proliferationの2匹のみに陽性であつた.癌では23匹中11匹(47.8%)に陽性であつた.病理組織学分類別にみると,tubular adenocarcinomaでは4匹中3匹(75.0%),poorly differentiated adenocarcinoma 8匹中5匹(62.5%)undifferentiated carcinoma11匹中3匹(27.3%)にestrogenreceptor陽性がみられた.
性別では,雄32匹中7匹(21.9%),雌13匹中6匹(45.2%)にestrogen receptor陽性で雌に多く,病理組織分類ではundifferentiated carcinomaでやや少ない傾向がみられた.
以上,本実験膵癌の発生,あるいは発育にestrogen receptorが関与する可能性のあることが示唆された.

キーワード
7,12-dimethylbenzanthracene(DMBA)実験膵癌, estrogen receptor


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