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日外会誌. 83(5): 486-492, 1982


原著

感染性心内膜炎活動期に大動脈僧帽弁置換術を行つた1小児治験例

名古屋大学 医学部第1外科

田中 稔 , 弥政 洋太郎 , 阿部 稔雄 , 清水 健 , 村瀬 允也 , 野垣 英逸

(昭和57年1月21日受付)

I.内容要旨
感染性心内膜炎に起因する大動脈弁兼僧帽弁閉鎖不全により急激に心不全が進行し,入院後5日目感染活動期に緊急大動脈弁僧帽弁置換術を行い,救命することのできた小児例を経験したので,その経過,術前診断,手術所見を中心に報告した.
症例は12歳の少女で,心疾患の既往はなく生来健康であつた.入院時,発熱と心不全(NYHA IV)を認めたが,2週間前から乾性の咳嗽があつた.入院後echocardiographyを中心とした非観血的検査およびSwan-Ganzカテーテルによる右心カテーテル検査を行い,大動脈弁兼僧帽弁閉鎖不全症と診断を下した.心不全が急激に悪化するため,入院後5日目に緊急二弁置換術を行つた.使用人工弁は,Björk-Shiley Valve 19 ABPと23 MBRCであつた.術前血液培養は陰性であつたが,切除弁の組織標本は顕微鏡下で急性炎症の所見を認めた.
術後8カ月現在,患者は元気に小学校へ通学しており,再感染や弁の逆流所見はない.

キーワード
感染性心内膜炎, 小児弁置換術, 大動脈弁僧帽弁置換術


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