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日外会誌. 83(5): 415-424, 1982


原著

ヌードマウス可移植性ヒトがん株を用いたin vivoおよびin vitro制がん剤感受性試験

慶応義塾大学 医学部外科学教室(指導:阿部令彦教授)

花谷 勇治

(昭和57年1月16日受付)

I.内容要旨
ヒト固型がんに対するin vitro制がん剤感受性試験の成績が,in vivoにおける制がん剤効果をどれだけ予測しうるかを検討する目的で,ヌードマウス可移植性ヒト固型がん9株につき,in vivoおよびin vitro制がん剤感受性試験をおこない,両者の成績を比較検討した.
in vivo制がん剤感受性試験はヌードマウスを用いBattelle Columbus Laboratories Protocolに従い実施した.in vitro制がん剤感受性試験はトリプシン処理により得られる初代培養細胞を用い,がん細胞内への3H-thymidine(3H-TdR)とりこみ抑制により検討した.
制がん剤はmitomycin C(MMC),aclacinomycin A(ACM),adriamycin(ADM),cyclophosphamide(CPA)および4-hydroperoxy-cyclophosphamide(4-OH-CPA)を用いた.
in vivo制がん剤感受性試験では,MMCは9株中7株(77.8%)に有効であり,このうち6株(66.7%)に腫瘍退縮を認めた.ACMは9株中6株(66.7%),ADMは9株中4株(44.4%)に有効で,MMCにつぐ制がん効果を示した.CPAは胃癌5株・結腸癌2株に対しては,いずれも無効であつたが,乳腺由来の未分化癌および下肢悪性血管外皮細胞腫には腫瘍退縮効果を認め,他の3剤とは異なる抗腫瘍スペクトラムを示した.
がん細胞初代培養の至適条件は,細胞数2×104個/well,培養時間は48時間,3H-TdR 1μCi/well添加後24時間接触であつた.in vitro制がん剤感受性試験では,被験9株に対してACMは4剤中最も強い抑制効果を示した.その効果は,50%核酸合成阻害濃度の比較では,MMCの4倍,ADMの13倍,CPAの51倍と考えられた.
in vivoとin vitro制がん剤感受性試験成績の比較では,両判定結果の合致率はMMC 8/9(88.9%),ACM 6/9(66.7%),ADM 7/9(77.8%),CPA 8/9(88.9%)であつた.また,MMCとCPAに関しては,in vivoとin vitroの成績間に推計学的に有意の相関(相関係数r=0.731,0.713,ともにp<0.02)を認め,in vitro制がん剤感受性試験の成績から,in vivoにおける効果を予測することが可能であると考えられた.

キーワード
ヌードマウス可移植性ヒトがん株, 制がん剤感受性試験, 培養ヒトがん細胞


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