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日外会誌. 83(4): 396-406, 1982


原著

小腸広範切除術後の膵機能に関する実験的研究

鳥取大学 第1外科(主任:古賀成昌教投)

竹内 勤

(昭和57年1月5日受付)

I.内容要旨
小腸広範切除術(広切)の膵機能におよぼす影響をみるために,慢性膵瘻犬(Herrera変法)を作成し,小腸上部75%および下部75%切除を行ない,意識下における広切前後の膵内外分泌機能を検討した.
市販缶詰dog foodを負荷したmeal testによる膵外分泌機能検査では,広切後には最高重炭酸濃度が高くなる傾向がみられ,特に下部広切後基礎分泌時最高重炭酸濃度が有意に上昇した.しかし,膵液量,アミラーゼ総排泄量には大きな変化はみられなかつた.
膵内分泌機能検査では,静脈内ブドウ糖負荷試験で広切後にブドウ糖利用恒数K値の低下,インスリン分泌反応の低下がみられ,アルギニン負荷試験では膵グルカゴン過剰反応,インスリン/グルカゴンモル濃度比の低値が認められた.
食餌負荷による血中セクレチン分泌反応については,食餌摂取によるセクレチン値の変動はきわめて少なく,広切前後で有意の変動はみられなかつた.
以上より,腸管広範囲切除による消化管ホルモン脱落等の影響は膵外分泌に対しては少なく,神経性因子や他の因子により代償されているものと思われる.一方,膵内分泌はentero-insular axisを介して,広切により大きく影響をうけるものと推察されるが,これら膵内外分泌機能の変化が広切後の実地臨床上問題となる消化吸収障害などshort bowel syndromeの発現に大きな役割を演じているとは考えにくい.

キーワード
小腸広範切除, 膵内外分泌機能, 慢性膵瘻犬, 消化管ホルモン

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