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日外会誌. 83(3): 249-256, 1982


原著

消化管および腫瘍組織におけるsubstance Pに関する研究

慶応義塾大学 医学部外科学教室(指導:阿部令彦教授)

露木 晃

(昭和56年11月4日受付)

I.内容要旨
神経細胞,神経線維および消化管に存在し,消化管ホルモンまたは神経伝逹物質としてその作用が注目されているsubstanceP(SP)について,ヒト消化管および腫瘍組織内濃度を,radioimmunoassay(RIA)を用いて測定し検討した.
ヒト消化管組織では,SPに加えてvasoact iveintestinal polypeptide(VIP),motilinおよびsecretinも同時に測定した.
SPの抽出法については,各種検討し最も抽出率の高い沸騰水抽出法により組織を抽出し,試料検体とした.
ヒト消化管組織では,SPは胃より直腸にわたる腸管全域に分布しているが,十二指腸でとくに高濃度に検出された.VIPも腸管全域に分布しており,SPと同様に十二指腸に高濃度に証明された.しかし,motilinとsecretinは前2者の分布とは異なり,十二指腸,小腸のみに高濃度に存在し,大腸にはほとんど認められなかった.消化管に存在するペプタイドのうちで,一度血中に放出され消化管に作用するという典型的な消化管ホルモンとしての機能を持つものと,SPやVIPの様にそれに加えて,神経伝導物質としての機能をも合せ持つているペプタイドとは,消化管における存在部位の分布に明らかな差があることを示した.
更に,消化管では虫垂に高濃度のSPが存在し,VIPも同様に高濃度に検出されたが,motilinとsecretinは測定限界以下であった.
腫瘍組織中のSPを54例について測定したが,そのうち卵巣カルチノイド,神経節芽細胞腫,Grawitz腫瘍各1例合計3例のみに,SPが証明された.このSP濃度は,一般の消化管ホルモン産生腫瘍におけるその他のホルモンの値と比較すると,低い値であった.

キーワード
substance P, ヒト消化管内分布, 虫垂組織, 腫瘍産生

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