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日外会誌. 83(2): 175-185, 1982


原著

正常および消化器癌患者における末梢血各分画別リンパ球の細胞障害性と親和性の検討

岡山大学 第1外科学教室(主任:折田薫三教授)

松井 武志

(昭和56年10月5日受付)

I.内容要旨
NK活性をもつeffector cellsの性格やkillingのメカニズムに関しては不明な点が多く,まだ充分に究明されていない.今回われわれは、健康人および消化器癌患者末梢血リンパ球を各分画にわけ,それぞれのcytotoxicityを測定し,さらに標的細胞に対するaffinityを測定し,比較検討した.
健康および消化器癌患者末梢血より、Eロゼット法およびTheophylline法を用い,リンパ球をWholl cells,T cells,non T cells,T γ cells,T non γ cellsに分画採取しP-4788およびM-HeLaを標的細胞として51Cr release assayにてNK活性を測定した.同時にFlow Laboratories製のSuperbeadsにP-4788およびM-HeLaのmonolayerを作り,これに51Crで標識させた各分画リンパ球を付着させFBSに重層し,1 G30分で,adherent lymphocytes,nonadherent lymphocytesに分けることによって,各分画リンパ球の,標的細胞に対するaffinityを測定した.
NK活性は,いずれのリンパ球分画にもみられた.このうち健康人ではnon T cellsはT cellsに比べて明らかに高いNK活性がみられた.またT γ cellsはT non γ cellsに比べて高いNK活性を示した.しかし消化器癌患者では,non T ceIIsとT cells分画間に差はみられず,健康人とはことなる結果であった.一方各分画のaffinityを測定すると,健康人ではT cells分画がnon T cells分画に比して高い親和性を示し,NK活性とは相反する動きであった.消化器癌患者ではwhole cellsで,健康人に比し低下傾向がみられT cellsでは明らかな低下を示した.
以上の結果,消化器癌患者のNK活性の低下は,non T cellsの活性低下が主たる原因と考えられ,またT cellsのaffinityの低下が,インターフェロンを介するlow affinity E rosette forming cellsのNK活性上昇を防げる一因ではないかと考えられた。

キーワード
Natural Killer cell (NK cell), affinity, subpopulations of lymphocyte, effector cell

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