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日外会誌. 83(2): 137-149, 1982


原著

がん患者免疫能に関する研究
第2編 がん患者末梢血単核球細胞の同種培養腫瘍細胞に対する細胞障害活性および抗体依存性細胞障害能の検討

広島大学原爆放射能医学研究所 臨床第2(外科)部門(指導:服部孝雄教授)

柳川 悦朗

(昭和56年8月30日受付)

I.内容要旨
がん患者の免疫病態を把握するために、がん患者と同一臓器由来の同種培養腫瘍細胞に対する末梢血単核球の細胞障害活性およびantibody-dependent cellular cytotoxicity(ADCC)活性を胃がん,乳がん患者を対象として検討した.
胃がん患者末梢血単核球の胃がん培養細胞,乳がん培養細胞に対する細胞障害活性は,AB血清添加培養液中においてI,II,III期では健康正常人と同程度の活性を示したが,IV期では有意に低い活性を示した.自己血清添加による細胞障害活性におよぼす効果を検討すると,早期例では細胞障害活性を増強させる傾向が見られ,逆に進行例では細胞障害活性を抑制させる傾向が見られた.
一方,胃がん患者末梢血単核球の胃がん培養細胞に対するADCC活性は健康正常人のADCC活性と差がなく,病期による影響も見られなかった.胃がん培養細胞に対する細胞障害活性が自己血清添加によつて増強される胃がん患者群においては,そのADCC活性が健康正常人の活性より高い傾向があるのに対し,乳がん培養細胞に対する細胞障害活性におよぼす自己血清効果と胃がん培養細胞に対するADCC活性とは関連性が見られなかつた.
乳がん患者の乳がん培養細胞に対する細胞障害活性は,AB血清添加培養液中ではI期で既に有意の活性低下を示したが,自己血清添加培養液中においてはI期の活性は健康正常人に比べ差がなく,II~IV期で有意の活性低下を示した.また乳がん患者の胃がん培養細胞に対するADCC活性もII~IV期で健康正常人より有意に低い活性を示した.
以上の結果から胃がん患者と乳がん患者とではその免疫病態が若干異なることが示唆されるが,自己血清添加による細胞障害活性の増強はADCCが関与している可能性があり,逆に自己血清添加による細胞障害活性の抑制には血清抑制因子が関与している可能性が示唆された.

キーワード
ヒト悪性腫瘍患者, 末梢血単核球, 細胞障害活性, がん患者血清, ADCC活性

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