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日外会誌. 83(1): 53-59, 1982


原著

甲状腺色素リンパ造影法に関する実験的並びに臨床的研究,第II編 臨床的研究

鳥取大学 医学部第2外科(主任:森 透教授)

尾崎 修武 , 平井 啓介 , 丸山 茂樹 , 提嶋 正 , 森 透

(昭和55年2月14日受付)

I.内容要旨
癌の手術に際しては転移腸性リンパ節を的確に郭清する必要があるが,術中に転移の有無を判定しながら郭清を進めることは容易ではない.我々は手術中にリンパ節を確認する目的で甲状腺色素リンパ造影法(Thyroid chromolymphography)を考案・開発したが,これを甲状腺癌症例に応用して頸部リンパ節転移の判定を色素取込みの有無から検討し,以下の結果を得た.
(1)全症例を対象とした検討,組織型別の検討,並びにT分類による病期分類別検討の,いずれの場合でも,色素を取込んだリンパ節に転移が有意に多くみられた.
(2)所属部位別の検討では,下内深頸リンパ節群で,色素を取込んだリンパ節への転移陽性率が有意に高かった.
(3)肉眼的判定による転移の有無と色素取込みとの関係から,色素を取込んだリンパ節は肉眼的に転移陽性と判定され易く,しかも組織学的にも転移陽性であることが多いことが判明した.
以上から,甲状腺癌の頸部郭清に際しては,甲状腺色素造影を施行して色素リンパ節を目標に郭清を行えば,転移陽性リンパ節を取残す危険が減少することが示唆された.

キーワード
甲状腺色素リンパ造影, 着色転移率, 甲状腺癌, 頸部郭清, Thyroid chromolymphography


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