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日外会誌. 82(12): 1442-1446, 1981


原著

肝障害例における血中遊離アミノ酸異常

東北大学 第1外科(主任:佐藤寿雄教授)

高木 靖 , 小山 研二 , 今岡 洋一 , 大和田 康夫 , 大内 清昭 , 浅沼 義博 , 三井 照夫 , 深谷 久美 , 中川 國利 , 岡部 健二 , 芦野 吉和 , 面川 進 , 丹野 弘晃

(昭和56年7月20日受付)

I.内容要旨
肝障害時の血中遊離アミノ酸パターンの異常は芳香族アミノ酸 (AAA) の増加と側鎮型アミノ酸 (BCAA) の減少が主体である. しかし肝疾患の種類やその重症度によつてアミノグラムに若干の差異が認められる. そこで高度閉塞性黄疸6例,肝壊死や劇症肝炎などで昏睡に陥つた急性肝不全5例, さらに門脈圧亢進症を伴なう肝線維症(IPH)24例,同肝硬変症(LC)43例などの肝疾患症例と,対照として5例の健常成人を加えた計83例の血中遊離アミノ酸を測定し,そのアミノグラムと肝障害度との関連について比較検討した.閉塞性黄疸群では全般に低アミノ酸血症を示し,AAAやメチオニンなどの増加は認められなかったのに対し,IPH,LC,肝不全例と肝障害が高度となるに従いAAAの増加, BCAAの減少が著明となつた.各群におけるBCAA/AAA (MR) は対照例の3.95±0.37に対し黄疸群1.66±0.33,IPH 2.05±0.59,LC 1.74±0.56と有意の低値を示し (p<0.001),肝不全群では 0.44±0.09と最も低値であった.また,肝硬変症においては脳症既往を有する症例で他の肝硬変症例に比しMR値はより低い値を示した.MR値と各種検査成績との比較検討ではGOT,GPT,総ビリルビン値などとは相関が認められなかつたが,ZTT (p<0.01),血清γ-グロブリン量 (p<0.01),プロトロソビン時間 (p<0.001),KICGおよびICGR15などとは良く相関した.また,MR値は経口的NH4 Cl負荷による血中総アンモニア濃度とも相関 (p<0.001)を示し,さらにIPH,LC群において組織学的に検索した肝実質容積比とも相関 (p<0.02) が認められた.
以上より胆汁うっ滞,線維化,肝壊死など肝障害の相違によりアミノグラムは異なるものの, BCAA/AAA (MR) 値は肝の実質障害度の指標となり得るものと考えられた.

キーワード
血中遊離アミノ酸, 肝不全, アミノ酸モル比, 芳香族アミノ酸, 側鎖型アミノ酸


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