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日外会誌. 82(12): 1430-1441, 1981


原著

クモ膜下出血に関連したストレス潰瘍の実験的研究
実験的クモ膜下出血と軽度拘束水浸との合併による潰瘍ラットモデルを中心に

岐阜大学 医学部第2外科

土屋 十次 , 伊藤 善郎 , 日野 輝夫 , 大橋 広文 , 国枝 篤郎 , 坂田 一記

(昭和56年7月6日受付)

I.内容要旨
破裂脳動脈瘤直達手術後に往々合併しうる神経原性ストレス潰瘍について実験的に検索する目的 で, クモ膜下出血(SAH)が病因的に関連したストレス潰瘍ラットモデルを作成した.ラットにSAH を起こさせただけでは潰瘍形成は見られなかつたが,これに3時間拘束水浸を負荷(SAH-stressラットモデル)したところ,生理的食塩水クモ膜下腔注入群に3時間拘束水浸を負荷した場合に比して格 段に著明な潰瘍が形成され,それは正常ラットを9時間拘束水浸負荷した時に発生する潰瘍に匹敵した.このSAH-stressラットモデルを用いて,各種阻害実験による潰瘍防止効果や,胃粘膜血液分布, 拘束水浸ストレス負荷中の胃液酸度などを検討した.その結果,クモ膜下出血に起因する自律神経中 枢を含む中枢神経系の過敏性ないし異常興奮状態が存在しうることが推察され, このような状態下に 本実験モデルにおける軽度拘束水浸,臨床例における手術侵襲等のストレッサーが作用すると,交感 および副交感神経系を介して胃の防御因子の減弱,攻撃因子の増強が惹起され,著明な潰瘍形成に至りうるものと推定された.阻害実験の結果,潰瘍抑制率は上昇順に, pentobrabital SAH後48時間持続静注,diphenyl hydantoin投与, 5-OHDA投与, sulpiride投与,幽門形成術, diazepam投与, cimetidine投与,幹迷切+幽門形成術, pentobarbital one-shot投与で,それぞれ64.2, 65.6,69.8,70.6,80.6,83.7,87.5,97.9,100%であつた.これらの結果は臨床例における治療指針にも示唆を与えるものと思われる.

キーワード
ストレス潰瘍, クモ膜下出血, 胃粘膜血流, cimetidine, barbiturate

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