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日外会誌. 82(12): 1415-1429, 1981


原著

ヌードマウスにおけるヒト癌生着を左右する諸因子の検討と問題点

滋賀医科大学 第1外科
京都府立医科大学 第2外科学教室(指導:橋本 勇教授)
滋賀医科大学 外科学第1講座( 指導:小玉正智教授)

角田 冨士男

(昭和56年6月3日受付)

I.内容要旨
ヒト消化器癌を中心に胃癌12,小腸癌1,結腸癌5,直腸癌2,膵臓癌1,肺臓癌1,乳癌3の合わせて25例の悪性腫瘍と良性胸腺腫1例を径2-3mmの組織塊を作製しBalb/C nu/nu JCL雄マウスの両側背皮下に移植した.生着率は胃癌33.3% (4/12),小腸癌100%(1/1),結腸癌60%(3/5),直腸癌100%(2/2),膵臓癌100%(1/1),肺臓癌100%(1/1),乳癌0% (0/3),良性胸腺腫100%(1/1)で全体としては50%(13/26)で,悪性腫瘍のみでは48%(12/25)であった.患者の性別では男64.3%(9/14),女33.3% (4/12)であった.患者の入院時臨床検査成績では,特に胃癌で血清α2-グロブリン値の低値なものに生着率が高く(p<0.02),また, PPD反応の低値なものに生着率が高い傾向を認めた.移植組織塊中腫瘍組織占有率は, 25%以下でも50%以上のものと同等に生着しうる.マウス週齢との関係では, 初代移植の場合は5-9週齢のマウスで55.0%(11/22),10週齢以降のマウスで36.5%(4/11)であったが,継代移植の場合では, 週齢と関係なく全体として94.5% (4/11)と生着率は高かった.原発巣より組織塊を採取して移植した場合の生着率は33.3% (6/18)で,転移リンパ節からの場合は70.0%(7/10)であった.細胞浮遊液を作製して移植したもの,癌性腹膜炎の腹水より癌細胞を採取して移植したもので生着したものはなかった.移植後250mm3以上に達した後に自然消褪した3腫瘍12組織塊を認めた.初代移植での移植組織塊の生着率は54/128(46.8%)であったが,継代すると75%以上の組織塊が生着した(p<0.001). ダブリングタイムを計算すると,胃癌で1.0-7.1日,大腸癌では1.3-17.4日であった.

キーワード
ヒト癌異種移植, ヒト癌成長曲線, ヒト癌ダブリングタイム


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