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日外会誌. 82(11): 1339-1345, 1981


原著

遠位脾腎静脈吻合術の肝への影響(実験的研究)-Eck手術との比較

兵庫医科大学 第2外科教室

芦田 寛 , 伊藤 信義 , 石川 羊男 , 楠 徳郎 , 松本 正道

(昭和56年6月22日受付)

I.内容要旨
雑種成犬を用い,選択的shunt手術である遠位脾腎静脈吻合術の肝に及ぼす影響を, Eck手術と対比して,術後1か月目で検討した.肝血行動態の検討には,水素ガスクリアランス法による肝局所血流量とICG血漿消失率(KICG)を用いた. アンモニア処理能の検討には経口アンモニア負荷を用いた.さらに肝組織像についても検討した.
成績:①肝局所血流量はshunt犬で平均13.2%の低下であり, EcKの犬の平均47.8%の低下より有意に(p<0.01)軽度であつた.② ICG血漿消失率はshunt犬で平均16.6%の低下であり,Eck犬の平均58.5%の低下より有意に(p<0.01)軽度であつた.③経口アンモニア負荷はshunt犬では術前とほとんど変化は認めなかったが, Eck犬では前値の有意な(p<0.01)上昇のみならず, アンモニア処理能の低下を認めた.④肝組織像はshunt犬ではほとんど変化を認めなかつたが, EcK犬では肝細胞の萎縮・変性, sinusoidの拡張および肝細胞索の乱れを全般に認めた.
以上,遠位脾腎静脈吻合術の肝に及ぼす影響はEck手術に比較してはるかに軽微であるといえる.

キーワード
遠位脾腎静脈吻合術, 門脈下大静端側吻合術, 肝局所血流量, KlCG, 経口アンモニア負荷

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