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日外会誌. 82(8): 885-897, 1981


原著

肝予備能に及ぼす手術侵襲の影響
-肝切除の適応と限界-

大阪大学 第1外科教室(主任:川島康生教授)

吉川 澄

(昭和56年4月10日受付)

I.内容要旨
消化器外科症例において,手術前後のICG最大除去率(ICG maximal removal rate,ICG Rmax) を測定し,肝予備能に及ぼす手術侵襲の影響を明らかにするとともに,肝切除時の手術適応に対する基準をもうけた.
実験及ひ臨床例のICG投与後の血中消失曲線の検討から,ICGR maxが短期間に測定可能であることを示し, ICG Rmaxを一日で求めた.
この方法により,肝切除症例27例を含む消化器外科症例56例について,手術前後のICGR maxの変動を検討した. ICG Rmaxは一日測定法により, 術前,術後3日, 7日目,肝切除例では更に14日, 28日目に測定した.
手術術後のICG Rmaxの変動は,胃・胆道疾患でもつとも少なく,肝切除例中の拡大切除例でもつとも著明であつた.
肝切除例のICG Rmaxの変動は,術後3日目で最低値を示し,以後,術前値へと次第に回復する傾向が認められた.
又, このICGRmaxの術後3日目の,術前値に対する低下率は,各肝切除術式によつて有意差を示した.すなわち, 左葉切除以下では, -27.3±25.9%, 右葉切除例では, -69.6±7.2%, 拡大切除例では,-85.7±7.0%であつた.
一方, 術後ICGR maxが0.1mg/kg/min. 以下の値を示す症例では,肝不全への移行がみられた.
以上の結果から,肝切除時の手術適応と限界について, 以下の一応の墓準をもうけた.
肝右葉切除例では,術前のICG Rmaxが0.4mg/kg/min. 以上が手術適応となる.左葉切除例では,この値以下でも手術適応となるが,拡大切除例では,更に高値を必要とする.

キーワード
肝予備能, ICG Rmax, 肝切除


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