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日外会誌. 82(8): 872-884, 1981


原著

胃癌の発育経過に関する実験的研究

東京医科歯科大学 第1外科学講座(主任:毛受松寿教授)

中嶋 昭

(昭和56年4月2日受付)

I.内容要旨
ヒト胃癌の発生,発育に関する現象の解明を目的として, ENNG による実験イヌ胃癌を用いて検討した.
N-ethy1-N'-nitro-N-nitrosoguanidine (以下ENNG)の投与量を一定(150μg/日)とし, 3~12カ月間投与することによつて発癌した21頭の経時的な内視鏡的経過観察と生検組織および切除・剖検胃の組織学的検索から以下の成績を得た.
1. 胃癌の発育速度および発生部位とENNGの投与期間との間には相関が認められ, 投与期間が長いほど進行が速く,胃の上部にも発生した.
2. ENNG投与開始直後から出現した発赤は発癌と密接な関係を有した.また微小IIbの内視鏡所見として発赤が重要であつた.
3. ENNG 3~6カ月投与犬の12カ月前後までに発生した癌は微小なIIbの形態であつた.
4. 胃癌の発育進展に伴う形態変化は組織型によつて差が認められた.すなわち分化型癌は隆起性発育形式をとり,相似形的に増殖した.未分化型癌は陥凹性発育形式をとり, 3頭において早期の段階で悪性サイクルが認められた.
5. 2頭において多発癌の衝突,融合を認めた.これは多発癌の衝突・融合によつて1コの進行癌が成立する経路があることを示すものと考えられた.

キーワード
実験イヌ胃癌, ENNG, 胃癌の発育経過, 微小胃癌, 多発胃癌


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