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日外会誌. 82(8): 807-822, 1981


原著

静注用免疫グロブリン投与法の検討
-とくに至適投与法と投与限界について-

北海道大学 医学部第二外科教室(主任:田辺達三教授)

松倉 裕美

(昭和56年2月19日受付)

I.内容要旨
過去8年間に感染症対策として抗生物質併用下に静注用免疫グロブリン製剤を投与した各種の胸部,腹部疾患症例141例を対象とし,静注用免疫グロブリンの至適投与法,投与限界,無効例診断基準,抗生物質併用法,感染予防効果などについて検討した.
症例は術後感染合併症予防のため静注用免疫グロブリンを投与した43例,緑膿菌感染症19例, 6歳以下乳幼児術後感染症21例,術後呼吸器感染合併症53例,ゲンタマイシン投与を要した術後呼吸器感染合併症30例の各群に分類し検討した.
腋窩温37℃以上の有熱日数を主な指標とし,術後感染合併症発症までの日数,合併症発症後静注用免疫グロブリン投与開始までの日数,静注用免疫グロブリン投与回数,投与期間,初回投与量,総投与量,投与間隔などの項目ごとに静注用免疫グロブリン製剤投与法と有熱日数の関係を検討した.
その結果,① 静注用免疫グロブリン製剤は術後感染合併症の発症前に投与してもその効果は充分とは言えないこと,② 静注用免疫グロブリンは術後感染合併症の治療に有効であり,これは併用抗生物質の効果とは異なること, ③ 静注用免疫グロブリンは至適抗生物質併用下でなければ効果がないこと, ④ 至適抗生物質の先行投与開始下に静注用免疫グロブリン投与を開始した場合に最も有効であること, ⑤ 静注用免疫グロブリンは術後感染合併症発症後2日以内の早期に投与を開始し,連日投与法により3~5日間に3回以上,総投与量150mg/kg以上投与すると最も早期解熱が得られること, ⑥ 静注用免疫グロブリンは合併症発症後早期から5~6日間投与しても解熱の得られない例では有熱日数の延長がみられ,静注用免疫グロブリン投与の限界と考えられたこと,⑦ 白血球増多症を起し得ない無力状態となつた症例や,予後不良と考えられた感染合併症では静注用免疫グロブリンでは救命し得ず,かかる症例では静注用免疫グロブリソは無効と考えるべきこと,などが明らかとなつた.

キーワード
静注用免疫グロブリン, 術後呼吸器感染合併症, 緑膿菌感染症, 乳幼児術後感染合併症

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