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日外会誌. 82(7): 717-730, 1981


原著

血栓症におけるβ-thromboglobulinおよびplatelet factor 4の診断的意義
-とくに術後深部静脈血栓症について-

岐阜大学 第1外科(指導:稲田潔教授)

小久保 光治

(昭和56年2月12日受付)

I.内容要旨
術後深部静脈血栓症(以下DVT)のスクリーニングテストとしてβ-thromboglobulin (β-TG) の診断的意義を明らかにするため,一般外科105例を対象に経時的にβ-TGを測定し, 同時にplatelet factor 4 (PF4),凝固因子などを検索した.あわせて各種疾患におけるβ-TGおよびPF4の動態, PF4とヘパリン中和作用との関係について検討し,次の結果を得た.
1) 血漿/3-TGが健常者に比し有意に高値 (p<0.05) を示す疾患は閉塞性動脈硬化症, Buerger病,大動脈瘤および悪性腫瘍の4群で,血漿PF4が高値を示すのは悪性腫瘍のみであつた. 2) β-TGとPF4は有意の正相関を認めた. 3) β-TGによるスクリーニングで105例中17例 (16%) にDVTを検出した.血栓発生部位は全例下腿静脈(右7例,左7例,両側3例)であるが, うち4例では大腿静脈(右2例,左1例,両側1例)にも認められた. 4) DVT陽性群ではβ-TGの最高値は93.4±41.3ng/ml と高く,日差変動値も33.0±37.6ng/ml と大であつたが, 陰性群では最高値は40.0±8.0ng/ml と低く,変動値も6.9±6.0ng/ml と小であつた. 5) β-TGによるDVTの診断基準は,測定値が50ng/ml以上で,かつ日差変動が30ng/ml以上あればDVT陽性とし, 60ng/ml以上あれば変動が少なくてもDVTが疑われる. 6) PF4はDVT陽性群でも上昇が軽度で,変動も小さいため診断の指標としては不適当である. 7)Antithrombin lIIはDVT陽性群で術後第5, 7病日に有意(p<0.005) に低下した. 8) ヘパリン静注10分後にPF4は約10倍に上昇したが, β-TGは変動せず別個の動態を示した.以上より,β-TG測定は本邦におけるDVT診断のスクリーニングテストとしてもつとも有用と思われる.

キーワード
術後深部静脈血栓症, β-thromboglobulin, platelet factor 4, antithrombin Ⅲ, ヘパリン中和作用

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