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日外会誌. 82(7): 693-701, 1981


原著

可溶化腫瘍抗原を用いた腫瘍特異的細胞性免疫反応に関する実験的研究
第二編 腫瘍増殖に伴う担癌マウスの細胞性免疫能の変動について

昭和大学 外科教室(主任:石井淳一教授)

渋沢 三喜

(昭和55年11月6日受付)

I.内容要旨
担癌体における癌特異的あるいは非特異的細胞性免疫能を知ることは,患者の病態や予後を知る上で重要である.それ故,繰り返しの容易な免疫能測定方法が確立すれば,有用なパラメーターになると思われる.著者は低張食塩水抽出可溶化腫瘍抗原を用いて,担癌マウスにおける腫瘍細胞移植後のin vivo,in vitro細胞性免疫能の推移を, footpad assayによる遅延型皮膚反応, リンパ球一腫瘍細胞混合培養反応(MLTR), 白血球遊走阻止試験(LMIT), PHA・Con-Aによるリンパ球幼若化反応を用いて経時的に観察するとともに,各assay問の相関をだし,腫瘍増殖との関連を検討した.
MH-134腫瘍細胞をC3Hマウス皮下に接種し,接種後0, 6, 8, 10, 13, 16, 21日後に各assay を施行した.また一部は, 11日目すなわち転移のみられる前に腫瘤を結紮摘除し,同様の観察を行なつた.
この結果, footpad assay, MLTR, LMITは一致して10日目に最大反応値を示し, 以後は腫瘤の増大に伴い反応は低下した.PHA反応は6日, Con-A反応は8日に各々ピークを示し,以後は漸次低下した.また結紮摘除groupではいずれも感作状態が維持され, 腫瘍免疫が誘導された. 各assay間の相関をみると平均腫瘍径とはPHA反応が, footpad assay とはMLTR・Con-A反応が高い相関を示した.
以上の結果より,腫瘍増殖の経過における特異的免疫反応を観察する上で,経時的にモニターできる可溶化腫瘍抗原の応用は,有用であることが示された.

キーワード
可溶化腫瘍抗原, 腫瘍特異的細胞性免疫, 免疫学的パラメーター, 担癌マウス


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