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日外会誌. 82(6): 587-598, 1981


原著

悪性腫瘍患者の循環免疫複合体と免疫能

岐阜大学 医学部第1外科(指導:稲田 潔教授)

雑賀 俊夫

(昭和55年12月15日受付)

I.内容要旨
悪性腫瘍患者では免疫能が低下していることは周知であり,その一因として循環免疫複合体(circulating immune complex以下C.I.C.)の関与が考えられる.悪性腫瘍患者114例(胃癌60例,大腸癌42例,肺癌 32例,乳癌10例)の血清を用い, C1q solid-phase radioimmunoassayにより, C.I.C. を検索し,同時に細胞性ならびに体液性免疫能を検索し,両者の関連性について検討した.
(I)手術前
1) C.I.C.陽性は16例(11.1%) であり, うちわけは胃癌7例(stage I,IIが各1例,IlIが3例,IVが2例),大腸癌4例(stage Iが1例, IIIが2例, VIが1例),肺癌5例(stage Iが1例, IlIが2例,IVが2例)であつた.
2) C.I.C.陽性群のツ反およびPHAの皮膚反応陰性例は,それぞれ16例中7例(43%)および16例中5例(31%)で,両者とも陰性は2例(12.5%)であつた.
3) C.I.C.陽性群と陰性群の比較
(i) T細胞%, B細胞%は有意差はなく,リンパ球幼若化率は陽性群が低値を示した.
(ii) 補体系(CH50,C3,C4) では陽性群はC3で低値を示したが,すべて有意差はなかつた.
(iii) 血清糖蛋白(α1-AG,α1-AT,Hp) では陽性群はα1-AG,α1-ATで高値を示したが,すべて有意差はなかつた.
(II)手術後
1) 術前陽性群と術前陰性群の術後比較
(i) T細胞%,B細胞%, リンパ球幼若化率で陽性群はすべて低値であつた.
(ii) 補体系で陽性群はCH50で低値, C3で高値を示し, C4で有意に低値(p<0.05)であつた.
(iii) 血清糖蛋白で陽性群はすべて高値であつた.
以上の結果より,悪性腫瘍患者のC.I.C.陽性例は進行癌に多く, C.I.C.は細胞性免疫能および体液性免疫能において明らかな差は認めないが,両者に与える影響は少なくないと思われる.

キーワード
循環免疫複合体, C1q solid-phase radioimmunoassay, 細胞性免疫, 体液性免疫


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