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日外会誌. 82(6): 566-574, 1981


原著

可溶化腫瘍抗原を用いた腫瘍特異的細胞性免疫反応に関する実験的研究
第一編 低張食塩水抽出可溶化抗原の腫瘍免疫原性について

昭和大学 外科教室(主任:石井淳ー教授)

渋沢 三喜

(昭和55年11月6日受付)

I.内容要旨
低張食塩水抽出可溶化抗原を用いてfootpad assay,Mixed Lymphocyte Tumor cell Reaction (MLTR),移植抵抗性試験を行ない,本可溶化抗原の腫瘍免疫原性についてマウスを使った実験により証明を試みた.
可溶化腫瘍抗原とBCGによる感作処置を施したgroupと非感作groupを対照として比較した. Footpad assayでは感作groupは非感作groupに比べ有意の差をもつて足蹠腫脹増加率で高かつた.MLTR はマイクロ法によつたが,最大反応値を示した培養日数・抗原濃度は感作の程度の違いにより変化し,感作マウスでは抗原濃度1.0μg/ml・培養4日目にピークがみられ,その刺激係数S.I. は1.68であつた.これに対し非感作マウスではS.I. 1.04と低値であつた.このことから,連続培養と抗原濃度を数段階にとつた培養が必要で,マイクロ法が有利なことがわかつた.footpad assay とMLTRとの間には有意の相関が認められた.また感作マウスでは非感作マウスに比べ移植抵抗性においても生存率においても高い値が得られた.
MH 134腫瘍の低い腫瘍抗原性が反映してか,以上のassay系で低張食塩水抽出物の抗原性は必ずしも充分高いものではないが, その腫瘍抗原性が示され,同系マウスにBCG と併用して抗腫瘍免疫を誘導しうることも示唆された.

キーワード
可溶化腫瘍抗原, 低張食塩水抽出法, 腫瘍特異的細胞性免疫, 腫瘍免疫原性, Mixed lymphocytetumor cell reaction


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