[書誌情報] [全文PDF] (10839KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 82(5): 441-455, 1981


原著

甲状腺髄様癌の臨床ならびに病理組織学的研究・散発性の髄様癌と家族性髄様癌の差異について

1) 名古屋大学 第1外科
2) 名古屋保健衛生大学 福慶外科

多米 英介1) , 佐橋 清美1) , 赤尾 勝彦1) , 前田 光信1) , 二村 雄次1) , 服部 龍夫1) , 弥政 洋太郎1) , 山口 晃弘2) , 三浦 馥2)

(昭和55年10月15日受付)

I.内容要旨
散発性の髄様癌と家族性の髄様癌は生物学的特徴に大きな差があるとされている.しかし臨床ならびに病理組織学的な立場から, この点についての検討が十分なされていない.そこで本論文ては散発性6例,家族性4例について,臨床ならびに病理組織学的,超微形態学的(特に分泌顆粒の数について)に,また7例については,抗カルチトニン抗体を用いた免疫組織学的に検討を加えた.
結果: (1) 散発性群は単発性に発生, 葉切除あるいは不完全な手術を行なつても予後がよい症例もあるが, 根治手術を行なつても術後早期に再発する症例があつた. 散発性群の腫瘍細胞は予後良好な症例は別として, Atypicalな細胞が主であつた.被膜は不完全ないし欠如し,隣接する甲状腺組織に浸潤することが多く,脈管侵襲も強かつた.アミロイド物質,石灰沈着も少い傾向があり, リンパ節転移も高度かつ高頻度であった. (2) 家族性群は両側,多中心性に発生した.甲状腺全摘を行なえば,術後早期の再発はなく,予後は良好と思われた.腫瘍細胞はTypicalな細胞からなり組織像も変化に富む.その他の事項においても一般に散発性群と相反する所見が得られた.また隣接する甲状腺内に傍濾胞細胞の過形成が認められた. (3) 従つて家族性群は傍濾胞細胞の過形成を甚盤とした悪性度の低い腫瘍であると考えられる. (4) 分泌顆粒の数は家族性群で多く,散発性群では少かつたが,予後の良い症例では比較的多かつた.従つて, 分泌顆粒の数は,腫瘍の悪性度と関係あると思われる.

キーワード
甲状腺髄様癌, 甲状腺傍濾胞細胞, カルチトニン, 散発性群, 家族性群


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。